現代美術家が映画の舞台あいさつで入籍を発表!
新進の現代美術家・加藤翼がネイティブアメリカンとアートプロジェクトを立ち上げる姿を追うドキュメンタリー映画『ミタケオヤシン』の公開前夜プレミアイベントが5日、新宿バルト9で行われ、加藤と江藤孝治監督のほか、スペシャルゲストとしてアート集団Chim↑Pomの卯城竜太、エリイが登壇。「アートは世界をどう変えるのか?」をテーマに、自由な雰囲気で語り合った。
学生時代から友人同士だったという彼ら。卯城が「翼くんとは『アートで世界を変えるには?』とか『そういうことに関心のない日本のアートってどうよ?』とか、昔からよく話をしていた。今回の撮影直前にも、ニューヨークで一緒に友達のスタジオに寝泊りしながら話したよね」と語り始めると、加藤は「あのときはネイティブアメリカンに関わるとは思っていなかった。友人の紹介の紹介でつながって、彼らと友達になったのがきっかけ。あとアメリカのグローバリズムとその反対のローカリズムにも興味があったから」と経緯を明かす。
加藤は、巨大な建造物をその土地に根ざした材料で作り、数百人協働でロープで引き起こしたり倒したりする「引き起こし」「引き倒し」というアートプロジェクトを世界各地で行なっている。本作ではその過程で、アメリカ先住民の迫害の歴史とも向き合うこととなった。Chim↑Pomも、福島第一原子力発電所付近で日本国旗を放射能マークに塗りかえた旗を掲げるパフォーマンスなど、リアルなテーマ性で社会を挑発するアート活動を展開している。
「原爆とか落とされて“アメリカって超イラッとする”感じが強い中、ネイティブアメリカンの歴史が、翼のハートに響いたんだなってわかった」とエリイが本作の感想を述べると、江藤監督も「僕はアートで何を変えられるのか懐疑的だったし、ネイティブアメリカンの歴史を知れば知るほど、アートを持ちこんでいいのか最初は疑っていたけど、撮りながら、彼らの痛ましい記憶が更新されて、アートが彼らの新しい記憶になるんだとわかりました」と心境の変化があったことを明かす。
「アートに限らず、何かプロジェクトをやれば、必ず何かは変わるし変わっちゃう。だから“変える”じゃなく“どう変えるか”だと思う」と加藤が続けると、卯城は「翼くんが偉いと思うのは、誰の助けもなく、自分で全部材料を集めて、その場所に入り込んでやってるでしょ。その行動力。本当に金がない貧乏な状況で、そんな人に『みんなでやろうよ』っていわれたら、もうやるしかないじゃん。それでやったあとに、みんなが『すげえよかった』って言っている。最高」と加藤をたたえると、エリイも「映画のタイトル通りだよ」とまとめた。タイトルの『ミタケオヤシン』は、スー族の言葉で「全てのものは連環している」の意味だ。イベントの席上、加藤は今回の旅に同行し本作に登場するパートナー・平野由香里さんとの入籍を発表。最後は「おめでとう」という声で会場は包まれていた。(取材・岸田智)
映画『ミタケオヤシン』は新宿バルト9ほか公開中