クローネンバーグ監督にインタビュー!鬼才が描き出したハリウッドの暗黒面とは!
現代ハリウッドの悪夢を描いた戦慄(せんりつ)のサスペンス映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』の日本公開が迫る鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が本作について語った。
本作に魅了された理由を「脚本だよ。ハリウッドは好きじゃないしね」と語ったクローネンバーグ監督。「クエンティン・タランティーノみたいに“映画についての映画”を作ることに興味はなかったのだけど、本当に脚本が素晴らしかった」とブルース・ワグナーの脚本を激賞した。
そんな本作には、ロバート・パティンソンをはじめ豪華キャストが集結。中でも、ハリウッドの暗黒面を体現したような醜悪なキャラクターを大熱演したジュリアン・ムーアについて監督は「どの女優も恐れて演じたがらなかったが、ジュリアンは決して恐れなかった。彼女は役を完全に理解し、映画の構造を把握していたよ」と大絶賛。
また本作には、幽霊が象徴的な存在として登場する。ハリウッドは、夢に破れてこの世から去った者たちの幽霊に取りつかれているのだろうか。「わたしは幽霊を信じていないけど、ハリウッドはメタファーとしての幽霊に取りつかれていると思う。マリリン・モンローやジェームズ・ディーン、サイレント映画の歴史のね。今でもハリウッドでは、過去の悲劇を現在のように感じることができるんだ」。
またリブートに続編、アメコミ映画が席巻するハリウッドの現状についても「良い時代ではないね。インディペンデント系の監督には本当に難しいだ。こちらは2,000万ドル(約22億円)で映画を作っているのに、ハリウッドは2億ドル(約220億円)もかけているのだから。『マップ~』は作るのに10年もかかった。いくら独創的で面白い企画があっても今のハリウッドで撮るのは本当に難しい」と吐露。(1ドル110円計算)
次回作の予定を聞くと「ない」と意外な答えが。「処女小説のConsumedが出版されて、次の作品を執筆している。今は小説を書くのが楽しいんだ」という監督。企画が進められていた『イースタン・プロミス』の続編についても「残念ながら撮ることはない。複雑な物語で脚本も完成していたんだけどね……。多くの理由から作れなくなったんだ」。しかし、最後には「本当に魅了的な企画に出会ったら、また映画を撮るけどね」と約束した。(小林真里)
映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』は12月20日より新宿武蔵野館ほか全国公開