オスカー候補の話題作『セルマ』でマーティン・ルーサー・キング・JRを演じたデヴィッド・オイェロウォとは?
映画『大統領の執事の涙』『インターステラー』などで注目された黒人俳優デヴィッド・オイェロウォが、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・JR(キング牧師)役を演じた話題作『セルマ(原題) / Selma』について語った。
本作は、キング牧師がアラバマ州セルマからモンゴメリーまで、多くの黒人たちと共に選挙権と人種差別の撤廃を求めて行った大行進を描いたもの。トム・ウィルキンソンがリンドン・ジョンソン大統領役、ティム・ロスが人種隔離廃止政策への反対を唱えたアラバマ州知事ジョージ・ウォレス役を演じ、新鋭エヴァ・デュヴルネ監督がメガホンを取った。
キング牧師を演じる過程において「キング牧師は、自分自身を偶像化したり、歴史的な人物だとは当然思っていなかった。彼は一人の男だった。僕はキング牧師を称賛しているが、僕は彼じゃない。でも、僕もキング牧師と同様に4人の子供の父親で、彼のようにキリスト教の信者で、さらに正義を重んじている。そういった点から、役柄に入っていった」と共通点を見いだしてから、役柄を下調べして掘り下げていったそうだ。
キング牧師が大行進を先導したことで生まれたものは「この大行進には参加できなかった人々も多く居たが、最終的には黒人、(人種差別に反対する)白人、さまざまな宗教の信者が人としてこの大行進に参加し、人種隔離政策と戦った。人が(正義のために)共に行動することは最も美しいことだ。彼ら参加者は知的で勇気があり、さらにかたくなでもあったんだ」とキング牧師の意思に賛同して参加した当時の人々に敬意を表した。
女流監督エヴァ・デュヴルネについて「(キング牧師を題材にした映画だが)エヴァ監督は女性にも光を当てている」と語る通り、女性の視点の描写にも注目だ。さらに彼女とプロデューサーのオプラ・ウィンフリーについては「彼らがモニターの後ろで僕の演技を見ているときは、僕の人生の中で最も至福の時だった。なぜなら黒人のプロデューサー、オプラ・ウィンフリーが制作し、黒人監督エヴァ・デュヴルネがこの美しいストーリーを描いたことは、ある意味キング牧師の(後に起こり得ることを想像した)夢でもあるからだ」と答えた。
映画は、キング牧師を美化せずに、さまざまな問題を抱えていた一人の男として描いている点が注目の作品。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)