「ミュージカル映画の過去・現在」ポスターで映画史を“見る”
東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の展示会「ポスターでみる映画史Part 2 ミュージカル映画の世界」。ミュージカル映画のジャンルの系譜をたどる構成となっており、連日熱心なファンが足を運んでいる。さる2月14日には、映画評論家・小藤田千栄子を迎えてトークイベントが開催され、こちらも盛況だった。
シリーズ「ポスターでみる映画史」の第2弾となる今回の展示品は、イラストレーター/デザイナーの和田誠のオリジナル版のコレクションを中心に、大山恭彦の逸品を加えた54点。
さらに、小藤田が寄贈したプレス資料も展示されている。戦前のRKO社のミュージカルからMGM社の作品群、1960年代以降の大作路線から『オール・ザット・ジャズ』まで、映画ファンにとっておなじみの作品が所狭しと並ぶ。オリジナル版は約104センチ×約68センチと日本版に比べて大判のため、壁の上下いっぱいに広がる、粋でモダンなアメリカン・グラフィックの表現をダイナミックに楽しむことができる。
点数は少ないが、オリジナル版と日本版の両方が展示されている作品もあり興味深い。『紳士は金髪がお好き』では、オリジナル版はポップな印象だが、日本版は2枚看板のジェーン・ラッセルとマリリン・モンローのポーズがお色気を強調しており、惹句(うたい文句)も含めて狙いが明確。『ウエスト・サイド物語』(共にリバイバル版)のオリジナル版はグラフィックなデザインだが、日本版では本作で人気を博したジョージ・チャキリスをメインに据えてローカライズされている。
「ミュージカル映画の過去・現在」と題したトークイベントでは、1950年代半ばからミュージカル映画を見始めたという小藤田が、自身の体験を交えて解説。1961年に公開された『ウエスト・サイド物語』は、マスコミ試写で観た映画評論家の故・淀川長治や映画監督の故・今村昌平さんが絶賛しているのを聞き、そんなにすごい映画なのかと観る前から興奮したという。「当時の映画館は入れ替え制ではなかったため、おにぎりを2個持って入り、1日3回は観た。何度も通った劇場では、雪村いづみさんや有名なジャズシンガーを何人も見かけた」(小藤田)。
2002年の『シカゴ』以降、ハリウッドでミュージカル映画が勢いを盛り返しているが、「カット割りが多いのは、何かをごまかしている証拠。フレッド・アステアなどの本物のスターなら小細工は必要ない」など、辛口のコメントも。また、舞台にも造詣が深く、初めてブロードウェイで観た「コーラスライン」の感想から現在の世界のミュージカルの傾向まで、約1時間にわたりミュージカルへの思いを熱く語った。(取材・文/今祥枝)
「ポスターでみる映画史Part 2 ミュージカル映画の世界」は3月29日まで開催。
3月14日(土)には、和田誠氏(イラストレーター/デザイナー、本展出品者)のトークイベントが予定されている。