放射能被ばくから子どもを守るためにすべきこと…鎌仲監督と絵本作家・五味太郎が辛口トーク
原発、放射能被ばくなどのテーマを追う鎌仲ひとみ監督の新作『小さき声のカノン』のトーク付き上映会が9日、東京・渋谷、シアター・イメージフォーラムで行われ、鎌仲監督と絵本作家・五味太郎氏が、3.11の震災後明らかになった、子どもたちをめぐる問題について語り合った。
鎌仲ひとみ監督と絵本作家・五味太郎氏の白熱トーク!フォトギャラリー
前作『内部被ばくを生き抜く』から3年、鎌仲監督が「被ばくから子どもを守る社会を作るには?」をテーマに、福島とチェルノブイリ原発事故(1986年)後のベラルーシを取材。愛するわが子への思いに駆られ行動を起こした母親たちの闘いを追う本作。安全な食べ物のネットワーク作りや、通学路の放射線量を自ら測定し除染する姿などは、両国の母親に共通している一方で、意識の違いも明らかになる。
二人のトークは、「(原発事故後)学校に行かないという選択肢もあるのでは?」と監督が福島の母親に語ったシーンをめぐってグッと白熱した。「通学路が汚染されても、母親は子どもを学校に行かせなきゃと思う。だから『行かなくていいのでは?』と言ったら驚かれたんです」と監督。これに五味氏は「僕は学校なんて、先生のためにあるもので、子どもは誰も喜んでいないと思っている。20年も前から、先生たちの前でこの話をしているんだ。勇気あるでしょ?」といたずらっぽい笑顔。
続けて五味氏は「ベラルーシの人たちは、歴史的背景なのか、国や政府を全然信用していないように見える。民間と国のどっちが先に動くかなんて順番に関係なく、いいと思ったら個人でやってしまうのでは」と話した。ベラルーシでは、内部被ばく量を下げるため、線量の低い地域に一定期間(最低21日)子どもを移し、安全な食と遊び場を提供する「保養」という療養法が、効果を上げていることが紹介され、国家予算も投じられるようになったという。「日本でも、経済的にはできるはずです」と鎌仲監督。
「学校でやるべきは、人の違いを認め合うこと、それを頭じゃなく生理的に感じるようにすること。個人を育てることだよ。そうすれば日本社会の風景も変わるはず」と強調した五味氏。鎌仲監督も「撮影して、行動を始めたお母さんたちのキャラがどんどん立ってきて、自分で考えて動き始める。羽を広げていく力がすごかった。『カノン』とタイトルしたのも、そんな理由です」と母親たちの秘めた力に感嘆しながら語った。(取材/岸田智)
映画『小さき声のカノン』は渋谷・シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中