サイエントロジーの中で何が起きているのか?アレックス・ギブニー監督の描くドキュメンタリー映画
アレックス・ギブニー監督が、宗教サイエントロジーを描いた新作『ゴーイング・クリア:サイエントロジー・アンド・ザ・プリズン・オブ・ビリーフ(原題) / Going Clear: Scientology and the Prison of Belief』について語った。
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本作は、創始者L・ロン・ハバードによる設立過程や彼の後継者デヴィッド・ミスキャヴィッジとIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)との対立、信者トム・クルーズ、ジョン・トラヴォルタなどのセレブとの関係性や内部虐待などを描いたもの。作家ローレンス・ライトの原作「Going Clear: Scientology, Hollywood, and the Prison of Belief」を基に製作されたドキュメンタリーだ。
原作について「原作はかなり詳細に観察され、その中で僕が焦点を合わせたのは、“Prison of Belief”(とらわれた信念)だった。これはサイエントロジーにとって重要だが、全ての人たちも、自分の(宗教、人への)信念に対してある程度捕虜になっていたことがあると思う。だから、盲信によってゾッとするような結果を招くことも理解できると思う。さらに、僕はどんな人物がどのようにこの宗教の信者になり、どういった経緯で脱退したかも描きかった」と製作意図も語った。
製作のHBOとは内容について何度も話し合ったそうだ。「サイエントロジーに関して書いた記者ポーレット・クーパーが、その後、同教団からハラスメントを受けた事件なども含めたくて、長尺な作品を手掛ける相談をHBOとしたが、彼らは2時間ものを望んだ。もっとも、同教団のように内部事情への遮断手段として訴訟を使うような教団を描くには、HBOの援助が必要だった」と明かした。
もしトム・クルーズやジョン・トラヴォルタが脱退し、世間に同宗教を語ったとしたら、という仮定には「彼らがアメリカのサイエントロジー内で起きている虐待に関して世間に話したことは一度もない。もし、彼らが世間に語れば、同宗教の現信者やこれから脱退する信者に対しても、明確なメッセージが送られる。本作で僕は、誰かの(宗教への)信念を攻撃したわけではなく、内部で起きている虐待問題を浮き彫りにし、責任のある宗教において、そんなことが人によって行われている現実を伝えたかった」と語った。
映画は、サイエントロジーの仕組みを理解できるだけでなく、信者を利用した運営手法なども掘り下げた問題作。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)