『カイロ・タイム ~異邦人』の監督が再びパトリシア・クラークソンとタッグを組んだ大人の映画とは?
映画『カイロ・タイム ~異邦人~』で監督を務めたルバ・ナッダが、パトリシア・クラークソンと再タッグを組んだ大人の関係を描いた話題作『オクトーバー・ゲール(原題) / October Gale』について語った。
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同作は、夫が亡くなり離島のコテージで暮らしていた医者ヘレン(パトリシア・クラークソン)が、ある日、銃で撃たれた謎の男ウィル(スコット・スピードマン)を助け家で治療したものの、彼を再度殺しにやってくるキラー(ティム・ロス)と、逃げ場のない嵐の中の孤島で争うというドラマ。
撮影では、天候に悩まされたそうだ。「昨年の春にトロントで撮影したけれど、あのときは最も寒かった年の冬だった。撮影前にスコットが『(ボートに乗るシーンがあるため)湖が凍っているから台無しだ!』と言っていたくらい。自然には逆らえないから撮影は悪夢になるかと思ったけれど、幸運にも1日だけ集中豪雨の日があって、雨と風が氷を解かして何とか撮影することができたの」と振り返った。撮影日数は20日間だったため大変だったそうだ。
パトリシアとの再タッグは「『カイロ・タイム ~異邦人~』では、彼女ととても良い時間を過ごせたから、彼女のためにまた新たな脚本を書いたの。彼女は、最小限の言葉とわずかな動きで感情表現ができるとても力強い女優で驚かされるわ。特にシンプルで(せりふの少ない)余白のある脚本と、悲しみを描いた今作では余計に彼女が必要だったの」と答え、さらになんとパトリシアと、新たにテレビ番組を企画していることも明かした。
『カイロ・タイム ~異邦人~』では、パトリシアが演じた役の夫は常に不在で、今作でもヘレンの夫はすでに亡くなっていて、夫不在の共通点がある。「『カイロ・タイム ~異邦人~』で製作資金を集めていた際に、夫の顔を見せるべきと指摘されたけれど、わたしはパトリシアが夫の不在を表現できるからその必要がないと主張し、今作でも(夫の死で)あえて泣き叫ぶようなことは彼女にさせたくなかった。なぜなら、わたしが見てきた人々の悲しみは、どっしりと重いもので、そのような悲しみを体現できるのはパトリシアしかいなかったから」と語り、パトリシアが演じたこの両役は、自分で生き抜こうとする女性であるとも語った。
映画は、大人の女性の魅力をあふれんばかりに表現できるパトリシアの演技力に脱帽の作品。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)