最後の映画スター・高倉健の俳優としての生きざまを振り返る
2014年11月に亡くなった高倉健の出演作品を4月から9月の半年にわたって放映する「映画俳優 高倉健」特集がWOWOWで4月4日よりスタートする。そこで、彼の映画スターとしての生きざまをあらためて振り返ってみた。
1956年にデビューした高倉は、1964年に始まった『日本侠客伝』シリーズでの中村錦之助との共演で人気を確立。加えて、翌年には『網走番外地』『昭和残侠伝』と次々にシリーズ化され、東映の看板スターに。しかし、1976年には東映を離れ、任侠(にんきょう)映画だけではなく、市井の人を多く演じるようになった。
引く手あまたのスターとなった高倉だったが、「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社刊)によると1年間に15本もの映画に出演したこともあるが、それでも複数の作品に並行して参加したことはないという。険しい雪山で撮影が敢行された『八甲田山』には3年かかり、その間、CMやインタビューも断っていた。そんな自分に課したルールに従い、黒澤明監督の『乱』への出演のチャンスを、先に決まった『居酒屋兆治』の撮影のために辞退している。「不器用」な気質ゆえか、義理堅い人柄ゆえか、何にしても一つの作品に集中するのが高倉のスタイルだったようだ。
一方で、「寡黙な男」との勝手なイメージを抱かれがちだが、本人を知る人の話の多くに「ジョークが好きだった」といったことが語られる。代表作である『網走番外地』シリーズや『幸福の黄色いハンカチ』などの演技にも、どことなくユーモラスな雰囲気は漂っている。『駅 STATION』は高倉が孤高の狙撃手を演じたシリアスかつ情緒あふれる作品だが、劇中、高倉と倍賞千恵子演じる赤ちょうちんのおかみが男女の関係になった後のシーンに入る主人公の心の声は何ともおかしく、思わず苦笑してしまう。
高倉が演じた人物像はいつも人情にあふれ筋の通った昔かたぎの男でありながら、捉えどころのない一面もあり、そこが魅力であった。それはインタビューやエピソードから垣間見える、映画スター・高倉健の姿にも重なるだろう。(文・岩永めぐみ)
「映画俳優 高倉健」特集は4月4日より毎週土曜日午前11:00からWOWOWシネマにて放送