アメリカのアニメ界の鬼才ビル・プリンプトンの新作とは?
アメリカのアニメ界の鬼才ビル・プリンプトンが、新作『チーティン’(原題) / Cheatin'』について語った。
ジェイクとエラは遊園地の乗り物の衝突で知り合いカップルになったが、ジェイクの浮気によってその関係に疑問を持ち始めたエラは、魔術師とロボット「ソウルマシン」の力を借りて、ジェイクが関係を持った浮気相手の体に入り込み、二人の絆を取り戻そうとする。今作は、アヌシー国際アニメーションフェスティバルの特別審査員賞を獲得した。
VODでの公開について「4月23日から Vimeo On Demand で配信する予定だ。われわれ製作関係者は、将来はこの形態が主流になっていくと信じている。今回彼らと契約できたのは、これまで僕の映画の配給の手伝いをしてくれた長年の友人ジェームズ・ハンコックが、スラムダンス映画祭でVimeoのパネルディスカッションをしていたジェレミー・ボクサーという人物に会い、そのジェレミーを通して契約することになった」と明かした。
製作過程について「企画自体は2009年に開始して絵コンテなども描き、フランスのプロデューサーが製作資金を調達していたが、製作はかなわなかった。結局、2012年にクラウドファンディングサイト、Kickstarterで製作資金を集めて撮影を再開して2013年に完成させてから、さまざまな映画祭に出品した。その際に幾つかの配給会社からオファーはあったものの、その内容が良くなかったため、Vimeoの公開になったわけだ。また、Kickstarterで製作資金を集めた理由は着色で、僕のイラストは、これまで水彩画のような絵が特徴だったが、それと似たアプローチがデジタルでもできると聞かされて、4人のアシスタントを雇ったことで、かなりの予算を費やしたからだ」と答えた。
映画内の構成は「実際に今作で描かれたものは、およそ95%が絵コンテのままだ。変わったのは、魔術師とロボット『ソウルマシン』だけだが、それが含まれたことで、次に何が起こるか予想できずに面白くなった。それと今作は、レトロの要素も多く、衣装は1950年代、車は1940年代、建築は1930年代、音楽はヨーロッパを感じさせるものだ」と語った。
映画は、せりふが全くないが、絵と音楽に圧倒的なエネルギーが感じられ、あっという間に鑑賞した気がした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)