全編手話の衝撃作『ザ・トライブ』主演女優が日本初の遠隔手話通訳で舞台あいさつ!
キャストは全員ろうあ者、字幕も音楽もない全編手話の衝撃作『ザ・トライブ』の主演女優ヤナ・ノヴィコヴァが24日、渋谷区のユーロスペースで行われた日本初の「遠隔手話通訳」による舞台あいさつに自国ベラルーシから参加した。遠隔手話通訳とは、テレビ電話を利用し、遠隔で行う手話通訳。今回は、日本とベラルーシの4か所を同時に結び、日本語から日本手話、そして国際手話に変換し、スクリーンとスピーカーを通してコミュニケーションを図った。
本作は、売春、恐喝など犯罪が横行するろうあ者の寄宿学校を舞台に、新入生の主人公がトライブ(族)のヒエラルキーに翻弄(ほんろう)されていくさまを、容赦ないバイオレンス描写を交えて描いた問題作。昨年のカンヌ国際映画祭で批評家週間グランプリを受賞したことでも話題を呼んだ。
想像を絶する過激な内容から、出演するときに抵抗はなかったか、という質問に対してヤナは、「出演が決まってもシナリオが存在しなかったので、どんな映画になるのか知らなかった。撮影するシーンの脚本が当日に渡され、ある日突然、全裸でラブシーンを撮ると言われ、かなり戸惑った」とコメント。それでも前向きなヤナは、「まず、心を裸にし、みんなで思いを共有し、一生懸命演じるよう努力した」と述懐した。
また、最も大変だったシーンについては、「やはり、中絶シーンですね。経験がないため、いろいろな方から情報を収集しましたが、あの苦しさを表現するのは並大抵ではなかった」と吐露。「涙を流すシーンも目薬などは一切使わず、自分の感情をできるだけ高めて、自然に泣くように努力した」とも語った。
映画を見終わったばかりの観客から、「感情が激しく高ぶると、手話も激しさを増すということが映像から伝わってきて驚いた」と感想が寄せられると、笑顔でうなずくヤナ。さらに、国をまたいだ遠隔手話通訳について「手話は世界共通だと思っていたが、国によって違うことを初めて知った」と感心する観客の声も聞かれた。(取材:坂田正樹)
映画『ザ・トライブ』は公開中