ハイヒールは女性の義務か?カンヌ国際映画祭で問題に
第68回カンヌ国際映画祭
フランスで開催中の第68回カンヌ国際映画祭で起こったとされるとある事件をきっかけに、“正装の靴”をめぐる問題が海外メディアを中心に話題を呼んでいる。
端を発したのはScreenDailyの記事。現地時間17日に『キャロル(原題) / Carol』のプレミア上映に参加しようとした50代の女性が、かかと部分が低い靴であったことを理由に入場を拒否されたというもの。同メディアは映画祭に問い合わせた際に、入場拒否の件へのコメントは拒否されたものの、レッドカーペットに参加する際には、全ての女性にハイヒールの着用を義務付けていることを認めていたと書かれている。
この記事に多くの映画関係者やメディアが反応。英 The Times の映画批評家であるケイト・ミューアが自身のツイッターで同記事を取り上げると、『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』などのアシフ・カパディア監督が「僕の妻も追い返されることがあったよ。(最終的には入れてもらったけどね)」と実際にそのような事例があったと報告。カパディア監督は、故エイミー・ワインハウスさんの新作ドキュメンタリー映画のため、カンヌ入りしていた。
しかしその一方で、カンヌ国際映画祭のディレクターであるティエリー・フレモーは「禁煙で礼装であること以外の規則はありません。ハイヒールを義務化しているということは根拠のないうわさです」とツイッターで断言。入場拒否の件を否定した。BBC News は映画祭に問い合わせた際に「タキシードとフォーマルドレスを着用するというルールは変わっていませんし、女性や男性の靴のかかとの高さについての規則はありません」という回答を得たとしている。
だが騒ぎはとどまらず、同映画祭で上映された『シカリオ(原題) / Sicario』の質疑応答中、主演のエミリー・ブラントに、ハイヒールではない女性が入場を拒否されたことをどう思うかという質問が飛ぶ場面も。エミリーは「正直に言うと、みんなフラットな靴を履くべきだわ。わたしたちはもうハイヒールを履くべきじゃない。個人的にだけどわたしはコンバースのスニーカーの方が好きね。とても残念だわ」と答えたとVarietyは報じている。
さらに「女性の正装靴はハイヒールでなければならないのか」「不条理だ」といった疑問の声がインターネット上に続々と上がっているほか、 The Hollywood Reporter は本映画祭中、パテントレザーのローファーで入場している女性もいれば、黒以外の靴は認められないと追い返されていたジャーナリストの男性もいたと事例を挙げつつ、今回の騒動を“Flatgate”という造語と共に取り上げている。それに続くようにCNNや Los Angeles Times が“Flatgate”を使用してこの件を報じるなど、まだまだ“正装の靴”をめぐる問題は収まらないようだ。(編集部・井本早紀)
第68回カンヌ国際映画祭は24日まで開催