人間を蹴散らしていく犬たち!パルムドールならぬパルムドッグ受賞作『ホワイト・ゴッド』
たくさんの犬が登場するハンガリー映画『ホワイト・ゴッド(英題) / White God』がハンガリー文化センター協賛の下、ロンドンフィルムスクールで上映され、コーネル・ムンドルッツォ監督が学生たちの質問に答えた。本作は昨年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作。パルムドールならぬパルムドッグ賞が出演のワンちゃんたちに贈られたことでも話題を呼んだ。
犬、犬、犬!映画『ホワイト・ゴッド(英題) / White God』フォトギャラリー
飼い主の少女リリーから引き離された犬のヘイゲンの姿を追う本作。ヘイゲンが他の犬を引き連れて人間たちを蹴散らしていくさまは犬版『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』を思わせるが、ヘイゲンを捜す失意のリリーの物語と交差させることで独特の映画に仕上がっている。
人の姿が見えない町で、自転車を走らせる少女の後に数百匹もの犬が続く圧巻の冒頭。ファンタジックとも受けとれる映像の意味は、意外な展開の中に同じ映像が再度登場する後半で明かされる。残酷なシーンもあることについてムンドルッツォ監督は、「ヨーロッパではエコノミッククライシスだけでなく、モラルクライシスも起こっている。それを単純化する形で重ね合わせた」と意図を語った。
タイトルについては「犬の視点では人間は神のようなもの」と説明。まさに、あちこち引き回され好き勝手に扱われる犬にとって、人間は大いなる力を持つ白い神そのもの。皮肉の効いたタイトルだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)