『台風のノルダ』26歳、新進気鋭のアニメーターが明かす「作画監督」というお仕事
「フミコの告白」(2009)、「rain town」(2011)で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門2年連続受賞の快挙を成し遂げ、『陽なたのアオシグレ』(2013)で劇場作品監督デビューを果たした石田祐康。26歳の若きアニメーターが、キャラクターデザインと作画監督を手掛けたスタジオコロリドの劇場短編アニメ映画『台風のノルダ』の舞台裏を語った。
【写真】26歳の監督&作画監督、若きコンビが作り上げた驚くべき世界…
学生時代からアニメを自主制作し、数多くの賞を獲得してきた石田は、手塚プロダクションで長編アニメ制作に携わった後コロリドに移籍。劇場公開作から企業イメージまで、数々の短編アニメを生み出し高く評価されてきた。盟友でもある新井陽次郎監督作『台風のノルダ』に参加した理由については「新井さんから、石田君ならこういうキャラ描けるよね? と誘われたのが最初」とのこと。「新井さんはジブリ出身ですが、それまで彼が描いてきたものとは違うタッチを求めていました。具体的にはキャラクターを描く際に、曲線だけでなく直線的なラインも取り入れるよう心掛けた、というように」と振り返った。
『台風のノルダ』は、台風と共に現れた謎の少女と二人の男子生徒の物語。少女はある使命を帯び、不思議なマシーンに乗ってやって来る。キャラクターに加えメカデザインも担当した石田は、「監督からのオーダーは、メカっぽさを出しつつも生物感を持たせること。カブトガニや微生物の参考写真をもとに、穴を掘ったりと変形する構造のパターンを考えながらデザインしました。宇宙船は一発でOKをもらいましたが、少女のブレスレットやペンダントは試行錯誤しながら何枚も描いてやっと、という感じでした」と監督のこだわりを語る。
作画監督としての主な仕事は原画のチェックや修正。「基本的に画(え)や動きを整えること。そしてアニメーターたちが迷わないよう道筋を付けることも大切」といい、作画面での監督からの要望を尋ねると「キャラクターを丁寧に動かすこと。例えばキャラが動いた後にピタリと止まるのではなく、緩やかに動き始め、緩やかに止まっていく感じです」と回答。使用した作画の枚数は、『陽なたのアオシグレ』の2倍以上に上ったという。それと同時にこうも語った。「まだまだ自分としてもスタジオとしても、至らぬおぼつかない面を多く発見できました。それをこれからに必ず生かしていきたい」。
劇場用アニメは長編が主流だが、コロリドは『陽なたのアオシグレ』、そして新作『台風のノルダ』と、2作の短編の劇場公開を実現。今回、『台風のノルダ』と共に『陽なたのアオシグレ』が併映作品として再上映されることに際し、石田は「実験的な面を含め、短編はさまざまな可能性を試せる大切な場。映画祭だけでなく、商業作品として定着させていきたい」と短編アニメが持つ可能性と抱負を語った。(取材・文:神武団四郎)
映画『台風のノルダ』は6月5日より全国にて3週間限定公開