人種差別問題を扱ったハリウッド映画、その変遷を振り返る
人種差別問題をテーマにした映画は、世界中で今も昔も多く製作されているが、中でもここ数年、毎年のようにアカデミー賞作品賞にノミネートされるなど、話題を集めるようになっているのがアフリカ系アメリカ人の差別問題を扱った作品だろう。その変遷を振り返ってみた。
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そもそも人種のるつぼであるアメリカにおいて、草創期から人種問題や差別問題と無縁ではないハリウッド映画。古くは巨匠D・W・グリフィス監督の『國民の創生』(1915)でも描かれていたりするが、当時の歴史的背景もあり差別問題を問題提起しテーマとして取り上げることはタブーであったといえよう。
1960年代に入り、公民権運動が盛り上がりを見せると、白人に受け入れられるよう作り上げられた品行方正で優等生な黒人を描いたといわれるような作品が登場するようになり、『野のユリ』(1963)で黒人男優として史上初のアカデミー賞を受賞したシドニー・ポワチエのようなスターが誕生。彼が主演を務め人気を博した『夜の大捜査線』(1967)でも当時の南部の様子が描かれるなどしているものの、テーマとして取り上げられているというにはまだほど遠かった。
1980年後半になると、『ミシシッピー・バーニング』(1988)や『グローリー』(1989)など、人種差別問題がダイレクトに伝わってくる作品が登場するように。1990年代に入ると『グローリー』でアカデミー賞(助演男優賞)に輝いたデンゼル・ワシントン主演の『マルコムX』(1992)や『アミスタッド』(1997)、『ザ・ハリケーン』(1999)といった実話が映画化され、史実と共に問題提起する形が見られるようになっていく。
以後、最近の5年間を見ても、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011)、『それでも夜は明ける』(2013)、『グローリー/明日(あす)への行進』(2014)といった当時の様子を描いた作品がアカデミー賞を受賞しているほか、『大統領の執事の涙』(2013)、『フルートベール駅で』(2013)のような現代までを網羅した作品などが次々と話題を集めている昨今。今後もさまざまな切り口で広がりを見せるテーマといえるかもしれない。(編集部・浅野麗)
映画『グローリー/明日(あす)への行進』は全国公開中