「ひつじのショーン」は子供向けじゃない!大人もハマる理由を監督が語る
シリーズ初の劇場版となる『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』のリチャード・スターザック監督が来日し、「ひつじのショーン」に子供だけでなく大人もハマる理由、独特なユーモアあふれるストーリーをどのようにして作るのか、その秘密を明かした。
「ひつじのショーン」は、10度のアカデミー賞ノミネーション、そして4度の受賞歴を誇る英国アードマン・アニメーションズ製作のクレイアニメ。羊のショーン、牧羊犬のビッツァー、牧場主を中心にした牧場でのドタバタをセリフなしで描き、子供だけでなく大人からも熱い支持を集めている。1話約7分のショートアニメの第4シリーズも現在NHK Eテレで放送中だ。
幅広い世代に人気の「ひつじのショーン」だが、ターゲットをどのように考えて制作したのかという質問に「おかしなことなんだけど、考えなかった」と即答して笑ったスターザック監督。「『ウォレスとグルミット』シリーズをはじめとしたアードマンの作品は子供たちが好きになってくれるけど、子供をターゲットに作ったわけじゃないんだ。僕たちはただ面白いものを作ろうとしている。自分たちが笑えるものをね。もし僕たち自身が好きなら、ほかのみんなもそうだろうという自信がある。だから、ターゲットにしている観客は実は僕たち自身なんだよ」と打ち明けた。
それだけに『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』には、いなくなった牧場主を捜して初めて都会に出たショーンたちが動物捕獲人に捕えられて入れられる収容施設に、映画『羊たちの沈黙』のレクター博士風の猫が居たりする(セリフなしの羊の映画なだけに!)。スターザック監督は「子供たちが理解できるかはわからないけど、ストーリーに直接関係する部分じゃないからOKなんだ」と子供向け、大人向けということではなく、ストーリーを邪魔しない部分のジョークなら制作チームの誰もが加えることができる環境があると語った。こうした細々としたジョークも本作の大きな魅力だ。
アードマンは、ピーター・ロードとデヴィッド・スプロクストンという二人のクリエイターが1972年に創設したアニメーション制作スタジオで、スターザック監督は社員第1号として1983年に入社。途中フリーランスになったりしながら、アードマンを中から外から眺めてきた。
「最初の10年の成長はとてもゆっくりだった。スタッフが5人になって、6人になって、1年おいて7人になってという感じで。(ハリウッドの)ドリームワークスがアードマンに興味を持って共に映画を作るようになってから突然、数人から何百人になった。すごく急激に大きくなったんだ。ただアードマンのオーナーたちは金儲けのためには作らない、好きじゃないものは作らない、誇りを持てるものを作るって言っている。規模は大幅に変わったけど、その部分は最初から今まで変わらないよ」。そうして作られる作品に大人も熱中するのは必然といえる。(編集部・市川遥)
『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』は公開中