麻薬組織に首を切り落とされた家族のために戦う男たち…サンダンス映画祭W受賞作とは?
今年のサンダンス映画祭のワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門で撮影賞/監督賞を受賞した映画『カーテル・ランド(原題) / Cartel Land』について、マシュー・ハイネマン監督が語った。
同作は、元ドラッグ中毒だったが、改心してアリゾナでメキシコからの麻薬密売を防ぐ国境の自警団リーダー、ティムさんと、メキシコの住民たちを守るために武器を手に立ち上がったミチョアカン州の自警団リーダーで外科医のホセ・マヌエル・ミレーレスさんを軸に、国境での麻薬の現状をリアルに映し出した秀作。
最も危険なドラッグ、メス(メタンフェタミン)を製造する人たちをも撮影したことについて「僕は、(危険な場所への)アクセスが全てだと思っている。これまで多くの映画やテレビ番組でドラッグが描かれ、多くの記事がドラッグを扱ってきた。僕は今作でそんなドラッグ問題の核心に迫りたかった。アリゾナの自警団とは何か月もかけて信頼を得た。メキシコのミチョアカンの自警団の方は、実際にリーダーのホセに会って電話番号を得てから、電話で彼に『あなたを撮影し、市民がドラッグ問題のために立ち上がっているところを撮影したい』と伝えた。最後にメスの製造者は、メキシコでの9か月の撮影で撮れたもので、両サイド(麻薬組織と自警団)を撮影できた」と満足げに答えた。
アリゾナの自警団ティムさんとメキシコの自警団ホセさんにフォーカスしたのは「まず、一般の男女が何を理由に武器を持ち始めたかが気になった。これまでの歴史でもそうだが、彼らもコミュニティーや家族を守るためだった。そこで、その中心に居るリーダーにフォーカスすることを決め、帰還兵のティムと外科医のホセに付いていくことになった。彼らは二人とも当時55歳で、ドラッグ問題の対策に関して、政府(米国、メキシコ)は失敗したと思っている。だから彼らは、自分たちが武器を持って立ち上がったんだ」と語った。
どのくらいの人数がドラッグ戦争で亡くなっているのか。「メキシコ側では2007年からおよそ8万人が亡くなり、2万人が行方不明になっていて直接の脅威だが、アリゾナ側にとってはメキシコのドラッグ戦争がもたらす恐怖で、いつその恐怖が国境を越えてくるかにある」と違いを説明した。
映画は、政府もお手上げのドラッグ無法地帯で、麻薬組織に首を切り落とされた家族のために戦う男たちに圧倒される。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)