実写版『進撃の巨人』、主人公のキャラ変更は原作者の要望…脚本・町山智浩が激白!
公開が迫る実写版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(8月1日公開)の脚本を担当した映画評論家の町山智浩が、主人公・エレンのキャラクター変更の理由や、「実写化不可能」といわれた同作への思いを、映画専門雑誌「映画秘宝」9月号で語った。
これが実写版!『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』特報
原作者の諫山創とメガホンを取った樋口真嗣監督との話し合いで名前が挙がり、樋口監督から直接参加依頼を受けたという町山。映画化を困難にした要因の一つが、原作の舞台がドイツであり登場人物もドイツ人である点。ファンの間には「ドイツ人を日本人が演じるな」といった声もあったという。
そこで町山は、樋口監督が同作を軍艦島で撮りたいというアイデアを持っていたこともあり、「もう原作とは根本的に違う世界で、設定を日本に変えるしかない」と決心。キャラクターの名前も違和感のないよう変更が検討され、一時は登場人物全員を日本人名にするという案もあったという。結果、名前は時と共に変わるという設定で主要メンバーの名は残したが、製作陣を困らせたのが原作屈指の人気を誇るリヴァイ。「いちばん大きくて重要なキャラクターにしようとしていた」という町山だが、名前に「ヴ」というアジアにはない発音があるため、どうしても説明が必要。結果として、登場を断念せざるを得なかった。
そして、自ら「炎上物件」と語るのが、主人公・エレンのキャラ変更。原作のエレンは少年漫画のヒーローらしく巨人を全く恐れないが、原作者の諫山自身、感情移入ができなかったといい、町山は「エレンを主人公にするなら……となったとき、諫山さんが出した条件が、原作のように恐れを知らぬ勇者ではなくて、最初は身動きできないくらい巨人を恐れる普通の恐れを持っている普通の人として登場させてほしいと」と明かす。
原作のエレンは、幼いころにヒロイン・ミカサを救うために殺人を経験している。彼を普通の人間に戻すとなると、殺人の過去も消さなくてはいけない。そうなると、ある種の共犯関係で結ばれたミカサとの絆も弱くなってしまう。しかし町山は「でもね、諫山さんの要望はさすがでした」と称賛。映画では2人とも、普通の平和な暮らしを送っていたところで巨人の恐怖に直面し、「日常やモラル」が完璧に破壊される。「そこでエレンは故郷だけでなく、大事な人も、自分のプライドも何もかも失ってしまいます」。
そしてエレンは、そんな己を罰するかのように戦いに踏み込んでいく。町山は、結果として本作が、普通の青年が贖罪(しょくざい)のために地獄を巡る姿を映した恐ろしいドラマになったと自負する。
実写化にあたっては、最初から失敗を決め付ける声も数多く上がった。そんな「巨人」に立ち向かう人間を笑う声に町山は、「この映画は絶対に勝ち目のない戦いに挑む話なんだから、作る側もそうでなくてはおかしい。負ける確率も高いが何もしなくては勝つ確率はゼロ」と反論すると、諫山や樋口監督ら製作陣を「枠の中で安全に生きようとしないで、壁を乗り越えようとする人たち」とたたえる。「エレンの戦いの原動力はやはり壁に対する怒りにするしかない。みんなが壁の中でそこそこ幸福に生きようとしているのに、エレンはそんなの耐えられない。当たって砕けろで巨人に立ち向かう。いろいろな事情でキャラとかは変わっちゃったけど、原作の本質はしっかり逃さないで映画化できたかな」。(編集部・入倉功一)
映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』は8月1日より全国公開
映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』は9月19日公開
「映画秘宝 2015年9月号」は発売中 洋泉社刊 (税込み1,080円)