俳優・宝田明、戦争は大罪!過酷な体験振り返り反戦訴える
俳優の宝田明が23日、日本大学の江古田校舎で行われた映画『ソ満国境 15歳の夏』のトークイベントに出席。旧満州(中国東北部)ハルビンでの戦争体験を明かしながら、反戦への思いを熱く語った。この日はメガホンを取った松島哲也監督と出演者の三村和敬も登壇した。
日中戦争において、当時のソ連と満州の国境付近に置き去りにされた新京第一中学校の生徒たちの過酷な逃避行を、東日本大震災で被災した福島の中学生の目を通して描いた本作。上映会場には大学生から戦争を知る世代、果ては登場人物たちと同年代の中学生まで、幅広い世代が来場した。
登壇した宝田は「松島監督からトークショーに出てほしいとラブコールがあり、わがことのようにうれしく、感動したのではせ参じました。僕らのような年代ではない監督が、こんなにも情熱を持って、幾多の苦難を乗り越えながら映画を実現させたのは本当に素晴らしい。胸の詰まるような思いで映画を拝見しておりました」と称賛すると、観客から大きな拍手が送られた。
テレビの終戦記念番組のために、先週までハルビンを訪れていたという宝田。「ソ連兵に撃たれたところ。靴磨きをして街中をさまよったところ。ソ連兵に殴られながらも泣く泣くタバコを売っていたところなど、懐かしいところを歩きました」と自らの体験を振り返り、「中国の方はとにかく安倍(晋三首相)はダメだと、現政権の政治のあり方を批判するわけです。わたしも二の句を継げませんでした。戦争は殺し合いなので、兵士だけでなく、市民に被害が及ぶという、悲劇があるわけです」とコメントする。
続けて「人間の犯す大罪は戦争を起こすこと」と語った宝田。「せっかく憲法第9条で平和を尊びながら、大きなたるにウイスキーのモルトを入れながら熟成させてきたのに、どんどん漏れてしまい、大地に染み渡っています。戦争というものは、喉元過ぎて忘れてはいけないもの。未来の若い人たちにお父さん、もしくはおじいちゃんは、なんであのときになぜ戦わなかったんだと、おしかりを受けることのないように頑張らないといけない」と呼び掛けると、会場は大きな拍手に包まれた。(取材・文:壬生智裕)
映画『ソ満国境 15歳の夏』は8月1日より新宿K's cinemaほか全国公開