『ゆれる』西川美和監督、直木賞候補作の自著「永い言い訳」を映画化!
『ゆれる』『ディア・ドクター』などの西川美和監督が、第153回直木賞候補作となった自著「永い言い訳」を映画化することが明らかになった。公開は2016年。30日、配給のアスミック・エースが発表した。
本作は、人気作家・津村啓として活躍する衣笠幸夫が、長年連れ添った妻・夏子をバス事故で亡くしてからの1年間を描く感動作。夏子に対する愛情をすでになくし、悲しみを演じることしかできない幸夫は、ある日同じ事故で亡くなった夏子の親友の遺族と出会う。妻の死に憔悴(しょうすい)したトラック運転手の父親、母を亡くした幼い兄妹を目の当たりにした幸夫は、自分でも理由がわからないまま彼らの家へ通って兄妹の面倒を見ることを申し出る……。
原案、脚本も務める西川監督は、「失うということがもたらす『はじまりの物語』を描きたいと思いました」と製作のきっかけを語ると、「これまで私は、安定していたはずの関係性が壊れてゆく物語を描いて来たように思いますが、崩壊のその後、ふたたび作り上げて行くということについてきちんと描いたことがなかったからです。『はじまりの物語』を綴ることは、人生を漕ぎ進むことの難しさに似ていますが、同時にあかるさや、楽しさにも満ちています」と本作が自身の作品ではこれまで描かれなかった再生の物語であることを明かす。
小説が映画に先行する形となったことについては、最初に脚本に取り掛かるこれまでのスタイルを振り返った上で、「予算や時間の制約、という映画的な課題をいったん据え置いて、先に小説というかたちで自由に物語を作ってみることにしました。そうすることで『豊かな無駄』をゆっくりと熟成し、登場人物や物語を練り込む時間が取れたと思っています」とその効果を述懐。
「小説は私の持ちうる言葉の限りで多くを語っていますが、こんどは言葉では語り得ないものをいかにスクリーンに映し出すかが第二の挑戦となりそうです。小説とは展開も設定も違えた部分が幾つもあります。私が原作者なので、それはもうやりたい放題です(笑)」と語るように、2015年春にクランクインした撮影は12月のクランクアップまで9か月間かけて行われるなど、映像ならではの魅力を引き出すための監督のこだわりが見られる。2012年の『夢売るふたり』以来4年ぶりとなる西川監督の最新作に期待したい。(編集部・吉田唯)
映画『永い言い訳』は2016年全国公開