アカデミー賞監督が描く、ミュージカル参加で未来を切り開いた子供たち
映画『中国 エイズ孤児の村』でアカデミー賞ドキュメンタリー映画賞(短編)を受賞したルビー・ヤン監督が、長編ドキュメンタリー作品『マイ・ヴォイス、マイ・ライフ(原題) / My Voice,My Life』について、出演者コビー・ウォンやシャオ・ファン・ラムと共に記者会見で語った。
中国の視覚障害の子供たちや成績の振るわない子供たち31人を集めてミュージカルに参加させ、その企画から本番までの過程を通して、少年少女たちが成長していくさまを描いた本作。
アジア・アメリカ国際映画祭のオープニングナイト作品にも選ばれた。「とても光栄です。同映画祭の主催者の香港経済貿易オフィスは、今作に出演した女の子、コビー・ウォンやシャオ・ファン・ラムを同映画祭に招待してくれただけでなく、彼女たちがいつでもアメリカを訪れることができるよう10年間のビザも発行してくれました。今作は香港コミュニティーからポジティブな反応を受け、さらに香港のスター俳優アンディ・ラウのマネージャーが、編集初期の段階の映像を観て、今作をアンディに薦めてくれたおかげで、彼の映画会社フォーカス・フィルムズが配給に関わってくれました」とヤン監督は感謝した。
ミュージカルで主役を務めたコビーは「このミュージカルに参加するまで学校が嫌いで、成績も良くない生徒だった。それがある日、校長からL・プラス・H・クリエイションズ・ファンデーションが主催するミュージカルに参加しないかと勧められたの。二つ返事で参加してみたら、演出家の先生から、自分がやりたいことにベストの状態で臨めば、何でもできると教わった。その後、学校に戻ってから大学に向けて勉強しているわ」と語った。
視覚障害のある生徒シャオ・ファンは「わたしはこのミュージカルに出演している視覚障害のある生徒の一人で、健常者の生徒と共にこのミュージカルに出演することができた。今作とミュージカルの成功が、わたしのような障害者でも、健常者のようにダンスができるという自信になった気がする。また今作を通して、ニューヨークやワシントンを訪問したり、美術館に行ったりしたことで、中国ではあまり学べなかったアメリカを知ることになった」と明かした。
映画は、学校にうまく溶け込むことのできなかった生徒たちが、一生懸命ミュージカルで表現しながら、自分を見いだしていく作品。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)