役所広司&松坂桃李、『日本のいちばん長い日』を今、発信する意義を考える
今年5月に公開された『駆込み女と駆出し男』を大ヒットに導いた原田眞人監督がその豪腕を発揮した、さらなる歴史超大作『日本のいちばん長い日』。豪華キャストの中、阿南惟幾陸軍大臣を演じた役所広司と、畑中健二陸軍少佐役の松坂桃李が、戦後70年となる今年、本作を世に届けることの意義について語り合った。
映画の内容は、太平洋戦争末期、戦況が絶望的となった1945年4月から運命の8月15日、つまり日本がポツダム宣言を受け入れ終戦を知らせる昭和天皇の玉音放送が国民に届くまでを克明に描く史実もの。原作は、昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション。1967年、岡本喜八監督によってすでに同タイトルで映画化されているが、のちに追加取材を基にし、いくつか重要な記述を修正した“決定版”が出版されており、本作はそれだけでなく半藤氏が当時の首相と天皇の関係を綿密に追った「聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎」や、角田房子著「一死、大罪を謝す 陸軍大臣阿南惟幾」、さらに2014年9月に宮内庁から公表されたばかりの「昭和天皇実録」なども参照している。
一億総玉砕を主張する陸軍将校たちの血気たぎる思いを背負いながら、かつて侍従武官を務めた天皇陛下の身を案じて苦悩し、平和的解決を模索する阿南役の役所は、「岡本監督版とは違い、今回は“戦争を身をもって知らない”世代を中心に映画化に挑みましたが、悲劇を二度と繰り返さぬためにも作り続ける意義は大きいと思います」と、今、この映画を世に問う重要性を説いた。
続けて、「日本は敗戦国になったからこそ、70年前に起きた出来事を自分たちで直視し、発信し続けていく必要がある」と語ったのは、徹底抗戦を果たすため決起する畑中役の松坂。「この作品に出演して、次の世代へとバトンを手渡す義務、その大切さを以前にも増して感じている」と映画を通じて“歴史を生きた”二人ならではの覚悟が! “決断”の歴史が新たなアプローチでつづられたこの作品は、そんな二人の真摯(しんし)かつ熱い思いが込められた一作となっている。(取材・文:轟夕起夫)
映画『日本のいちばん長い日』は8月8日より全国公開