へなちょこテディベア映画『クーキー』監督、キュートな息子に主演を断られていた
パペットと実写を組み合わせて制作されたチェコ映画『クーキー』のヤン・スヴェラーク監督が息子で主演のオンジェイ君(15)と来日し、彼が主演を務めることになった経緯を語った。
本作で描かれるのは、古くなってゴミ捨て場に捨てられてしまったへなちょこテディベアが、大好きな少年オンドラのもとへ戻るために繰り広げる大冒険。オンジェイ君はパペットパートのクーキーの声だけでなく、実写パートのオンドラも演じている。
「わたしの父(俳優のズディニェク・スヴェラーク)と一緒に会話の収録に参加してもらったんです。彼は老人役で、子供の声が必要だったので」と初めはパペットパートの撮影をサポートするための仮の声を務めてもらうだけの予定だったが、ポストプロダクションになって撮影中にずっと使ってきた息子の声を実際に映画に使いたくなったというスヴェラーク監督。しかし「『実写部分に出ないか?』と聞いてみたら、彼は『いやだ』と言いました(笑)」とあえなく拒否されてしまったと打ち明ける。
「僕は若くナイーブで、映画などやりたくなかったんです」という当時8歳だったオンジェイ君に断られ、ほかの少年をキャスティングすることになったスヴェラーク監督だが、資金を調達する必要が出てきたため撮影は一時中断。撮影が再開されることになった1年後に再びオンジェイ君にオファーをすると「いいよ!」と言ってもらえたといい、「だから悪いことばっかりでも、それが逆にいいことにつながることもあるってことですね」と振り返った。
本作にはクーキーだけでなく、“森に住む自然の神様”という設定のパペットが多数登場する。森に住む神々や精霊というアイデアについて「チェコでは普通じゃないと思います。わたしの国の人々は無信仰で神でさえ信じていないんです」と明かしたスヴェラーク監督は、「この作品を通して自分自身、ひょっとしたらそういう世界もあるんじゃないかと提案したかったんです」と語る。欠点もある神になったのは、ギリシア神話の影響が強いという。
また、小さな自然の神様たちが、人間が捨てたペットボトルのキャップをコップなどにして大切に使っている点も興味深い。スヴェラーク監督は「わたしたちを取り巻く全てのものは、同じところからきています。原子は原子。だから木を使おうがプラスチックを使おうが関係ないんです。100年後にはプラスチックじゃなく、自然のシステムに戻っているはずですからね。ゴミをゴミ捨て場に捨てようが森に捨てようが、同じシステムの中にあるという部分では変わりません」と持論を展開していた。(編集部・市川遥)
映画『クーキー』は8月22日より新宿武蔵野館ほかにて公開