パトリシア・クラークソン、新作『しあわせへのまわり道』までの道のりを語る
映画『エイプリルの七面鳥』のパトリシア・クラークソンが、新作『しあわせへのまわり道』について語った。
本作は、ニューヨークの書評家ウェンディ(パトリシア)が、長年連れ添った夫との結婚生活が破綻し絶望する中、車を運転できない現実に気付き、インド人のタクシードライバーのダルワーン(ベン・キングズレー)にレッスンを受けるというもの。宗教や価値観の違う男女が車の運転を通して心を開いていく。映画『死ぬまでにしたい10のこと』のイザベル・コイシェがメガホンを取った。
まずは、車の運転について「映画内でわたしが運転しているシーンは、全て実際にわたしが運転しているの。その中でも(渋滞の激しい)クイーンズボロ橋の運転は怖かったわ。わたしはニューオーリンズで育ち、父から車の運転を教わり、カローラを乗り回していたけれど、19歳のときにニューヨークに移ってからは、高速などが怖くて運転をやめてしまったの」と明かした。
本作は、ニューヨーカー誌に掲載されたキャサ・ポリットのエッセイが基になっている。「彼女のエッセイを読んで、とても素晴らしい作品だと思ったわ。その当時、40代だったわたしには、いろいろな意味でそのエッセイの内容が胸に突き刺さったの。でも今から考えてみれば、あのとき今作を製作しなくてよかった。わたし自身が50代になっていないと、この映画は成立しなかったと思う。それに、わたし自身も女性としてさまざまな体験をしていなければ演じることが無理だったかもしれない」と振り返った。
製作まで9年もかかったのは、パトリシアが適齢になるまで待っていたわけではなかったそうだ。「脚本が2人の中年を扱い、車の中の設定だったことで、(題材的に製作資金を集めることが困難なため)3ストライクを宣告されたようなものだった。そのため製作スタジオは、ダルワーンの人種をインド人から別の人種に変えて、ヴィゴ・モーテンセンのような有名な俳優を、わたしの共演者としてキャストしようと考えたり、車の中のシーンをできる限り減らそうとしたりした時期もあった。でもダルワーンがインド人で、車の中でさまざまなことが起こることこそが、今作の醍醐味(だいごみ)であることを製作陣に伝えたの」と彼女が粘って、重要な要素が映画に残されたことを明かした。
映画は、固定概念を持った中年の二人がお互いの世界を受け入れ、新たな道へ進んでいく設定が興味深い作品。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
映画『しあわせへのまわり道』は公開中