声を失ったピンク四天王・佐野和宏、熱い議論に歓喜!18年ぶり監督作が初上映!
1990年代にピンク四天王の一人として異彩を放った佐野和宏18年ぶりの監督作『バット・オンリー・ラヴ』が28日、大分県由布市で開催中の第40回湯布院映画祭の特別試写作品として初お披露目された。この日は飯島洋一、柄本佑、円城ひとみらも来場した。
柄本佑らも出席!『バット・オンリー・ラヴ』湯布院映画祭フォトギャラリー
映画運動家として活動する寺脇研が『戦争と一人の女』に続いてプロデュースした本作は、2011年に下咽頭がんで声帯を切除し、声を失った佐野自身を投影した男が主人公のドラマ。娘に血のつながりがないことを知った男が妻の不貞を疑い、激しく動揺する姿をエロチックに描き出している。
この日の佐野は筆談でシンポジウムに参加。佐野がボードに書いた言葉を寺脇が代わりに音読してみせるものの、「今日は俺が来てやったぞ」「俺の鬼気迫る演技を見ろ」など、おそらく佐野は書いていないであろうことまで付け加える始末。その都度、佐野が寺脇にツッコミを入れるさまはさながら漫才のようであり、会場は終始、笑いに包まれた。
本作の劇中では、妻の不貞を疑った主人公が、悲しみや怒りなどが入り交じった激しい思いを声なき声で叫び続ける、圧巻の長回しシーンがある。このシーンについて来場者の間では、賛否両論が巻き起こった。もともと脚本には、そのシーンのセリフが全て書かれていたというが、観客の幾人かから「セリフを聞き取るのが難しかった」という声があがったのだ。
観客からの「字幕を入れたらどうか」という問題提起に、議論は一気に白熱。寺脇も「確かに字幕を入れるという選択肢はあるが、入れたところで満足できるのだろうか。上映後にそこのセリフが書かれた紙を配るというのもどうか……」とプロデューサーとして結論を考えあぐねている様子。しかし佐野自身は一貫して「ここに描かれていることだけで想像してほしい。役者がそれだけの演技をしたんだから」と主張する。
その後も柄本が「比較的、読唇術などで理解できたので、それほど気にならなかった。むしろのどから出るヒューという音にすごくドキドキした」と語ると、他の観客からも「字幕は入れない方がいい。映画ファンには想像する力があるんだから」といった意見がいくつも飛び出し、大喜びで拍手を送ってみせた佐野。そこに寺脇は「お前だけだよ、喜んでいるのは!」とツッコミを入れてみせて、会場は大笑いとなった。(取材・文:壬生智裕)
映画バット・オンリー・ラヴ』は2016年公開