北野武ら多くの監督に愛された名助監督、約10年ぶりの監督作を湯布院で上映!
俳優の渋川清彦、脚本家の足立紳、そして映画監督の大崎章が30日、大分県由布市で開催された第40回湯布院映画祭のクロージング作品『お盆の弟』シンポジウムに来場した。
うだつの上がらない映画監督(渋川)がもがく姿をモノクロ映像でユーモラスに描き出した本作。大崎監督にとっては大森南朋主演の『キャッチボール屋』(2005)以来、およそ10年ぶりの監督作。脚本を『百円の恋』で注目を浴びた盟友・足立が務めている。大崎は、名助監督として長きにわたり日本映画界を支えてきた人物。渋川の「今は大崎さんも温和な感じですが、昔はすごくキレていたらしいですよ」といったコメントから、大崎の助監督時代の話となった。
北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海。』では、久しぶりにカチンコを打ったこともあり、初日のファーストカット撮影時に指を挟んでしまって「あいて!」。北野はゲラゲラ笑っていて、1週間くらい現場でネタにされたという。また、同じく北野作品『ソナチネ』の時は、撮休日に石垣島のゲームセンターに行き、パンチングボールを、5メートルほど助走をつけて思い切りパンチをしたら強度のねんざに。翌朝、首からギプスを下げた大崎を見た北野はやはり大笑い。その後、深夜番組で北野に「バカな助監督がいてね」とネタにされているのを聞いていた足立は、後にそれが大崎だと知り、ビックリしたという。
そんな大崎監督を足立は、「とにかく監督や作品に対する献身が尋常じゃない。そのためにはプロデューサーとケンカすることもいとわない。だから監督に信頼されるんでしょうね。あるとき、怒って(自分の)メガネを床にたたき付けたものの、その瞬間にあせっていたこともありましたが」と笑いながら評する。渋川も「大崎さんはまっとうな理由で怒っているから間違っていない」と信頼を寄せている様子だった。
また、足立によると、渋川ふんする売れない映画監督は、大崎監督をイメージして書いたという。それを踏まえ、「情けない役を演じるのはどう?」と質問された渋川は、「僕は『男はつらいよ』が大好きなので、どこかで渥美清さんを意識しているところがある。情けない男を演じるときは(渥美さんを基準に)『やりすぎかな』『渥美さんに引っ張られたかな』などと考えながら演じています。自分もシャキッとした性格ではないので、そういう男は演じて楽しいですね」と笑顔を見せた。(取材・文:壬生智裕)