神父たちによる児童性的虐待が題材…『アベンジャーズ』マーク・ラファロから教皇へ「本作で傷を癒やして」
第72回ベネチア国際映画祭
現地時間3日、第72回ベネチア国際映画祭でアウト・オブ・コンペティション部門に出品されている映画『スポットライト(原題) / Spotlight』の記者会見が行われ、『アベンジャーズ』のハルク役などで知られる主演のマーク・ラファロがローマ教皇に向けてメッセージを送った。
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本作は、米ボストンにおけるカトリック教会の神父たちによる児童性的虐待と、それが数十年にわたって組織的に隠ぺいされてきたという恐るべき事実を、1年にわたる取材によって暴いたボストン・グローブ紙の記者たちの姿を描いたドラマ。ラファロをはじめ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、ブライアン・ダーシー・ジェームズが事件を追ったチーム「スポットライト」の面々にふんしている。
カトリック教徒として育ちボストンの学校に通ったトーマス・マッカーシー監督には司祭に虐待されたことのある友達もおり、この題材はとてもパーソナルなものだったという。「虐待の被害者は二重の意味で裏切られたと語るんだ。つまり肉体的な虐待でもあり、精神的な虐待でもある。拠り所だったはずの教会に裏切られ、逃げ場がなくなってしまう。そしてこれは多くの人にとってまだ終わっていないこと。そう考えると、これがどんなに非道な犯罪かがわかるだろう」と力説する。
マッカーシー監督はこの映画がカトリック教会に変化をもたらすとは思わないとしながらも、ラファロは「被害者だけでなく、混沌とした世界で道を見失ってしまった全ての人々のために、バチカンがこの映画を、過ちを正しはじめるいい機会としてくれたらと思います」とコメント。「僕たちは、教皇がこの誇張のなく思慮深い物語をきっかけに、教会もまた負ったきずを癒やすことを望んでいます」と真摯(しんし)に教皇へメッセージを送った。
神父たちによる児童性的虐待が一つの柱であるのは間違いないが、本作は教会を攻撃しているわけではなく、メインとなっているのは真実を追求するジャーナリズムについてだ。マッカーシー監督は「この映画が、ハイレベルな調査に基づく記事が地域、そしてより大きなレベルに与え得るインパクトについて光を当てることを望んでいる」と実際に裁判所や警察署に赴く地域に根差したメディアの力が弱まっていることに警鐘を鳴らし、「もし本作が何らかの形で人々の目を覚ますのに役立てば素晴らしいことです」と作品に込めた思いを明かしていた。(編集部・市川遥)
第72回ベネチア国際映画祭は現地時間12日まで開催