黒沢清監督×西島秀俊×香川照之×竹内結子の新作スリラー、「ラストシーンはすさまじい表情」
映画『回路』『LOFT ロフト』やテレビドラマ「贖罪」などのホラー&スリラーの鬼才・黒沢清監督が、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を映画化したスリラー『クリーピー』が、9月4日に埼玉県の某大学でクランクアップ。最後のシーンを撮り終えた黒沢監督と西島秀俊のほか、香川照之、竹内結子、東出昌大、川口春菜らキャストがクランクアップを迎えた心境を明かした。
本作は、元刑事の犯罪心理学者・高倉(西島)が、かつての同僚・野上(東出)に依頼された6年前の一家失踪(しっそう)事件を、事件の生き残りである早紀(川口)の証言を得ながら捜査するうちに、奇妙な隣人・西野(香川)が事件に関わっているのではないかという疑惑に駆られるスリラー。西野の娘が高倉に告げた不可解な言葉、「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」の真意とは……? 正体不明な西野と、彼に翻弄(ほんろう)される高倉とその妻・康子(竹内)の心理戦が見ものだ。
8月1日にクラインクインし、猛暑の中約1か月間にわたって東京及び関東近郊で撮影を敢行した本作。黒沢ワールドに心酔する豪華キャストとともに撮影に臨んだ黒沢監督は、「撮影したどのシーンも印象に残っていますが、クランクアップ数日前に撮影したラストシーンは全員の緊張感が最高に高まったシーンで俳優たちの表情がすさまじいものになっていると思います。『人間ここまで来るんだ』という限界を見せてくれて、非常にエキサイティングでした」と感無量の様子。
一方、主演の西島は「非常に緊張して撮影に入りました。学べることがすごく多い現場で、改めて原点に還ったような気持ちで演じました」と『LOFT ロフト』以来、黒沢監督と10年ぶりのタッグを組んだ喜びを語るとともに、「香川さんと竹内さんとは別の作品でも共演していますが、黒沢組に入るとまた全然違って、監督にコントロールされた世界で、まったく新鮮な関係性を演じることができたと思っています」と慣れ親しんだキャストとの、黒沢組ならではの化学反応を振り返る。また西島同様、『トウキョウソナタ』やテレビドラマ「贖罪」などで黒沢監督とあうんの呼吸を見せる香川は、本作のタイトルロールでもある「クリーピー(ぞっとするような)」な隣人に挑戦。「黒沢組は俳優にとって自由な発想と動きが許される数少ない現場なので、撮影が終わってしまった事がとても寂しいです」とクランクアップを名残惜しむ。
竹内をはじめ、今回黒沢組初参加となるキャストも「まさかこんなに恐ろしい世界を撮っているとは信じられないくらい不要な緊張をといて臨めた毎日だったので、いまだ演じた康子のように夢を見ているかのようなフワフワとした心地です」(竹内)、「撮り方や独特の空気感とか、今まで味わったことがない現場」(川口)、「大好きでずっと参加したいと思っていた黒沢組は、とても独特で、すごくプロフェッショナルで、身の引き締まる思いでした」(東出)と口々に、独特な黒沢ワールドの魅力を興奮気味に語った。(編集部・石井百合子)
映画『クリーピー』は、2016年初夏全国公開