柳楽優弥&瀬戸康史、幕末の男たちのギャップはまだ理解できない
第39回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門に正式出品された映画『合葬』。杉浦日向子さんの傑作漫画を映画化した本作で、幕末という時代の波に翻弄(ほんろう)された侍を演じた柳楽優弥と瀬戸康史が、役柄を通して感じた幕末の若者たちへの思いを明かした。
本作は、慶応4年、300年近くにわたる徳川幕府が終わり、明治維新を迎えようとするときに、それを良しとせず、幕府の解体に最後まで抵抗した彰義隊に加わり、数奇な運命をたどることになった三人の若者を描いた物語。強い意志を持って彰義隊に入る極を演じた柳楽は、「時代劇自体、遠い存在のように感じるところがありましたが、杉浦さんの原作を読み、テーマが青春ということもあって(クランク)インする前からワクワクしていました」という。
一方、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で長州藩藩士を演じるなど幕末づいている瀬戸が演じたのは、養子先を追い出され、行くあてもなく極に引きずられて彰義隊に入る柾之助。「ふわふわっとしているキャラクターで、時代に流されているような役。こんな人があの時代にいたのかと驚きながら、自分と近いものも感じました」と話す。
撮影は昨年、全編真夏の京都で敢行。ほぼ同世代だけに「食事を一緒にしたりして仲良くなりました。年上の瀬戸さんは柾之助のようにふわっとして、場をまとめてくださいました」と柳楽が言えば、瀬戸は「(悌二郎役の岡山天音を含めて)生まれてきた環境も性格も違う三人の微妙で絶妙な空気感が、作品の世界観とどこか似ていて。うまく行ったのは二人のおかげです」とフォロー。抜群のチームワークが生まれ、激動の時代の中での男たちの友情と絆の物語を紡ぎ出している。
そんな男たちの刹那的な生きざまに対し、「彼らの生き方というのは現代の僕達にしてみれば本当の意味で理解しづらい部分もありますよね。国のため将軍のために一生懸命になり、死んでいくというのは切ないし、自我がないということにもなるような気がするんです。誰かのために生きるという考えは、僕が親にでもなったらわかるんでしょうか」と悩みながら答える瀬戸。柳楽も同じように、「同じ時代を描いた『許されざる者』にも出演しましたが、幕末にロマンを感じるというより、もっとその時代を知りたいですね。で、35歳ぐらいになったら、その境地に至りたい」と冗談っぽく語る。
わからないなりに、現代を生きる彼らが役柄を通して感じ取った激動の時代の青春。懸命に生きようとする若者たちの姿に、わたしたちも何か感じ取るものがありそうだ。(取材・文:前田かおり)
映画『合葬』は9月26日より新宿ピカデリーほか全国公開