歌うこと、笑うことを禁じられた人々…フランスのセザール賞7部門受賞の映画、日本公開へ
アフリカで実際に起きた武装勢力による抑圧を描き、フランスで100万人の動員を記録したアブデラマン・シサコ監督の映画『禁じられた歌声』が、12月26日よりユーロスペースほか全国公開されることが決定した。
世界遺産にも登録されている古都ティンブクトゥを舞台に人間の「赦し」を描いた本作。西アフリカ・マリ共和国のティンブクトゥでトゥアレグ族の少女トヤは、音楽が好きな父と母、羊飼いのイサンの4人で幸せに暮らしていた。ある日、町はイスラム過激派の兵士たちに占領されてしまい、住民たちは彼らの作り上げた法律に従って生きることを余儀なくされる。支配された人々は歌や笑い声、そしてサッカーさえも禁じられ、恐怖に怯える生活が始まった。
2012年にマリの北部にある町で実際に起きたイスラム過激派による若い事実婚カップルの投石公開処刑事件に触発されたシサコ監督が、宗教的対立から生じる災厄と過酷な現実をみつめながら詩的に、時に荒々しく少女とその家族の運命を描き出した本作は、2015年フランスのセザール賞7部門を受賞し、同年のアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。
「イスラムはテロの教えではありません。私自身イスラム教徒で、その信仰から寛容と共生を学んできました。この映画にはそうしたメッセージも込めています」と語るシサコ監督は当初、本作をドキュメンタリーとして制作する予定だった。国際的に著名な映画監督であるシサコ監督は身の危険を感じ、占領下で口をつぐんだ住民から本当の声を聴くことは出来ないと考え、劇映画に切り替えた。また音楽や歌うことも本作の重要なテーマになっており、一部キャストにはトゥアレグ音楽のミュージシャンを起用している。(編集部・那須本康)
映画『禁じられた歌声』は12月26日よりユーロスペースほか全国公開