松山ケンイチ&北川景子、故・森田芳光監督の夢を叶え感無量
第28回東京国際映画祭
俳優の松山ケンイチと女優の北川景子が29日、都内で開催中の第28回東京国際映画祭で「パノラマ部門」に出品された映画『の・ようなもの のようなもの』ワールドプレミアに、伊藤克信、杉山泰一監督と共に出席。2011年12月に亡くなった森田芳光監督作『の・ようなもの』(1981)のその後を描いた本作で、森田監督の夢を叶えた松山と北川は、晴れやかな笑顔を見せた。
本作は、古き良き下町を舞台に、真面目で冴えない落語家の志ん田(松山)が、落語を捨てて気軽に生きる兄弟子・志ん魚(伊藤)と出会うことで、悩みながらも自分らしく生きる楽しさを知っていく姿を描いたヒューマンドラマ。森田監督の劇場デビュー作『の・ようなもの』の35年後を描いたもので、過去に森田作品に出演した豪華キャストが当時の役柄を彷彿とさせる役で出演している。
前作では助監督を務め、長らく森田監督と共に映画を作り続けた杉山監督は、「(森田監督への)恩返しの思いを込めて作りました」と打ち明ける。当初、「森田監督や『の・ようなもの』のファンの期待を裏切ることにならないか」と尻込みもしたそうだが、「(森田)監督も黒澤明監督のリメイクをするくらいだから、自分の続編くらいやっちゃえという声が聞こえてきた」とか。それによって「(森田)監督の遺産(である)、出演者やスタッフをふんだんに使って、居直って撮ってみよう」と決意したのだという。
北川と森田監督作『サウスバウンド』(2007)で共演している松山も、「今思い出すのは、『サウンスバウンド』の舞台あいさつをやった時に、(森田監督に)『次は景子ちゃんと松山でラブストーリーを撮りたい』と言っていただいたこと」と思いをはせる。本作では、松山演じる志ん田と北川ふんする夕美の恋模様も見どころとなっており、松山は「今回、こういう形で実現できたのかなぁと思いました」としみじみと語ると、北川と微笑み合った。
そんな中、前作で主演を務め、本作でも同役で出演する伊藤は興奮を抑えきれない様子。「35年経って続編ができるというのはあり得ない話でびっくりした。でも、それが成立したのは、(前作にも出演した)尾藤(イサオ)さん、でんでんさんはじめ、兄弟弟子が全員生きていたから」と冗談交じりに語り、会場を沸かせた。(取材・文:鶴見菜美子)
映画『の・ようなもの のようなもの』は2016年1月16日より新宿ピカデリーほか全国公開