7年間監禁された母親と息子を描いたオスカー候補の話題作とは?
今年のトロント国際映画祭で観客賞を受賞した、オスカー候補とうわさの話題作『ルーム(原題) / Room』について、主演女優ブリー・ラーソンが語った。
本作は、監禁状態の部屋で生まれ育った少年ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)とその母親(ブリー)が、監禁されていた部屋から命懸けで脱出するものの、7年間監禁されていた彼らは、社会に適応するのに苦労するというもの。作家エマ・ドナヒューの同名小説を、映画『FRANK -フランク-』のレニー・アブラハムソン監督が映画化した。
エマ・ドナヒューの原作について「エマの原作は、今作の脚本を受け取る1年前に、友人から良い本と薦められて読んだの。わずか1日でその原作を読破し、脱出の場面は何度も泣きながら読んだわ。なぜなら、彼らが生きて脱出することが想像できなかったから。当然、脱出の過程は原作の途中に書かれているから、残りのページを見れば、彼らが生き残ることは予測できるけれど、それほど緊張感のあるサスペンスとして描かれていたの」と強い印象を受けたことを語った。
ジャック役のジェイコブとの共演は「実を言うと、3週間のリハーサル期間が撮影前に設けられたの。その間は撮影シーンのリハーサルをせずに、一緒におもちゃを組み立てたり、お互いの肖像画を描いたり、サウンドステージの機械で遊んだりしながら絆を深めていったわ。実際にはこれらの遊びは、映画の初めのほうのシーンと同じで、ジャックと母親が日常行っていたことをリハーサルでやっていたの。そのため実際に撮影に入った時は、ごく自然に二人とも演じられたわ」と語る通り、リアルな親子関係に驚かされる。
7年間監禁されていた女性を演じるうえで「レニーとは、約8か月かけて、原作に記されていた内容を通して、実際に7年間も監禁された女性が一体どんな状態なのかを理解しようとした。最初に、誘拐される前の母親を想像し、次に監禁された女性の脳裏や性的な虐待に関して、トラウマ専門のセラピストと話をしたり、さらに栄養士や医者とは、監禁されて栄養も取れず、ビタミン不足の状態の女性の目や髪がどのようなものかを聞いたりもしたわ」と周到な準備をして役に臨んだようだ。
映画は、感情の起伏の激しい母親をブリーが見事に演じ、最後までスリリングに描いたレニー・アブラハムソン監督の演出にも脱帽だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)