「ミルグラム実験」を描いた映画…ピーター・サースガードが明かす
演技派俳優ピーター・サースガードが、新作『エクスペリメンター(原題) / Experimenter』について語った。
本作は、1961年イェール大学で、電気ショックを与えることで権威者の指示に従う一般市民の心理状態をテストする「ミルグラム実験」を実施した、アメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラム(ピーター)を描いたもの。映画『ハムレット』のマイケル・アルメレイダ監督がメガホンを取った。
ミルグラムについて「彼は1950年代後半に社会心理学を学び、60年代前半に『権威への服従実験』を行ったことが最も有名だ。実はアルメレイダ監督が撮影2年前にさまざまな(ミルグラムの)資料を持って僕のもとを訪ねてきた。ある程度はミルグラムを知っているつもりでいたが、読んだ資料は僕が思っていた人物とは全く違っていた。もちろん、『権威への服従実験』という言葉は知っていたが、それは一般の人を驚かせる実験だと勘違いしていたくらいだ」と語るピーターは、撮影を通していろいろ学んだそうだ。
「権威への服従実験」について「まず、一般市民が入れられた部屋には、電気ショックの装置が低圧なものから高圧なものまである。別の部屋にはミルグラムが用意した俳優(一般市民は知らない)が居て、一般市民が質問した問題を俳優が間違えると、一般市民は俳優に電気ショックを与えなければいけない。実際に一般市民は別の部屋に居る俳優に電気ショックを与えていると信じて、電気ショックのレバーを下げることをためらうが、俳優の部屋では電気ショックを受けた人の録音された声が流れているだけなんだ。だが、その実験では参加したボランティアの65%が、最も高圧な電気ショックのレバーまで押したという結果が残っている」と説明した。
「権威への服従実験」はホロコーストを理解するための実験なのか、との質問に「ミルグラムは実験の際に、ホロコーストに関してはほとんど口にはしていない。彼はユダヤ人で、当然(戦争時の)1940年代も過ごしていたため、あらゆる戦争体験者やホロコーストの反響は理解しているが、実際のホロコーストとは距離を置いていた。ただ、後にスタンフォード監獄実験を行った彼の高校の同級生フィリップ・ジンバルドーもそうだが、どんな社会の環境下で(ホロコーストのような)悪が存在するのかを問うているのだと思う」と答えた。
映画は、権威に従ってしまう人間の心理が克明に描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)