タレント犬は保護施設出身が多い…ハリウッドのドッグトレーナーが明かす仕事とやりがい
雑種犬に重税が課せられる法律の影響で飼い主の少女と離れ離れになった犬・ハーゲンと、人間から虐げられ保護施設に入れられた犬たちの反乱を描いたハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』で動物コーディネーターを務めたテレサ・アン・ミラーがインタビューに応じ、ドッグトレーナーという仕事について語った。
『ベートーベン』や『ベイブ』などを手掛けたハリウッドを代表する動物トレーナーであるカール・ルイス・ミラーを父に持つテレサは、子供の頃から夏休みや放課後を利用して父の仕事を手伝い、小学生か中学生の頃には「この仕事は素晴らしいし、わたしにも向いているし、楽しむことができる」と将来の仕事としてドッグトレーナーを続けていきたいと思っていたそう。
偉大な父から学んだのは、「動物たちが自然な形で振る舞うことを許す」ということ。訓練では賞賛、おもちゃ、ご褒美、そして何よりトレーナーからの愛情表現によって犬たちにこちらが求めているポイントを伝え、撮影現場が犬たちを受け入れる体制ができているかどうかにも常に気を配る。「動物たちにはそれぞれの自然な姿で演技をしてもらうのが一番。軍隊のような厳しい命令では不自然な動きしか生まれないので、わたしも絶対にやりません」。
本作には、ハーゲン役を務めたタレント犬兄弟のルークとボディ(二匹一役)に加え、実際に施設で保護されていた250匹以上の犬たちが出演している。「一つの映画にこんなにたくさんの犬が出ることは滅多にないので、とても大変な作業でした。頭のよさそうな犬数を集めるのにも非常にエネルギーと知恵が要りました」と振り返ったテレサだが、「ただ、保護施設の犬たちをこの映画のために訓練することは、いつもと違う特別なことをやったわけではないんです。なぜならほとんどの俳優犬たちも、本作の犬たちと同じようにシェルターから来ている場合が多いのです」と明かす。
そうして訓練を受けた犬たちはスクリーンで躍動。その演技は高く評価され、カンヌ国際映画祭ではパルムドールならぬパルムドッグ賞が贈られた。「こんな形で彼らが認められるなんて思ってもみませんでした! 聞いた瞬間、彼らを抱きしめて、とても誇りに思いました!」と喜んだテレサ。さらにうれしいことに、保護施設から来た250匹以上の犬たち全ての里親が決まった。
「彼らはこの作品に出演することでしっかりとした訓練としつけを受けたので、人間と親交を深められるタイプの社交的な犬になることができました。その結果として全員が新しい家を見つけました。犬たちにとって幸せな居場所を見つけてあげることができて、とてもうれしいです」。(編集部・市川遥)
映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』は11月21日より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開