ケイト・ブランシェット、同性愛を描いた映画『キャロル』を語る
映画『ブルージャスミン』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたケイト・ブランシェットが、オスカー有力候補作『キャロル』(2016年2月11日~日本公開)について語った。
1952年のニューヨークが舞台の本作。デパートでアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)は、娘の親権をめぐって離婚訴訟中の美しい人妻キャロル(ケイト)と出会い、同性ながらも二人は強く惹(ひ)かれ合う。作家パトリシア・ハイスミスの小説を、映画『アイム・ノット・ゼア』のトッド・ヘインズが映画化した。
主人公キャロルについて「彼女はとてもプライベートな人物で、彼女の性的関心と性的関係は曖昧でも、不安定でもないの。でも、彼女が育った環境のせいで、自分の性的関心を表現できず、これまでひどい体験もしてきた。夫ハージとは愛情のない関係だけれど、彼に対しての関心が欠乏しているわけではないわ。でも表面上は、愛情のない関係に見え、そんな時にテレーズに出会うけれど、彼女は(テレーズとの関係を育むことで)多くを失うことになる。なぜならハージと別れるというリスクは、(同性愛の追求であり、その後の裁判で)娘との時間を失う危険性があるから」と説明した。
キャロルがテレーズに惹(ひ)かれたのは「キャロルはテレーズのように若い頃に、自分の目標や夢を表現することができなかった。その結果、キャロルは新たな恋人のテレーズに、人生で何を成し遂げたいかを聞き、写真家と答える彼女に自分を投影しているの」と明かした。
娘の親権について「(娘の親権をめぐって)キャロルは、母親として生きるための正しい選択をする。もし彼女がこの選択をしなかったら、キャロルをそれまで支持してきた観客の同情を失うリスクを背負うことになる。どんな時も、映画内で演じられる母親は、親として正しい(直感的な)感覚があることを観客は理解している。なぜなら母親になると真っ先に、(個人的な)アイデンティティーを失うことになるから。でも、観客に同情を求める演技には嫌悪を感じる。なぜなら、自分の役を“好きになってくれ”と主張しているようなものだから」と自身の見解を語った。
映画は、1950年代の同性愛を、洗練された感覚と美しい時代背景でつづった秀作。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)