内野聖陽と忽那汐里が魅せる、言葉や国を超えた熱演
1890年に海難事故に遭ったトルコ軍艦エルトゥールル号の日本人による船員救助と、95年後のトルコ人による在イラン日本人救出を描く映画『海難1890』。日本とトルコの絆を深めた史実を基にした超大作で、トルコ人を救った医師・田村を演じた内野聖陽と、彼の助手・ハルとテヘラン在留の春海の二役に挑んだ忽那汐里は、見事な英語のセリフを披露している。意外なことに、長ゼリフに挑戦した内野より、オーストラリア出身でネイティブスピーカーの忽那の方が英語に苦戦したようだ。
内野は座礁した船の船員たちの救助にあたる医師役ということもあり、劇中、助けた海軍大尉ムスタファとの会話はほぼ英語。撮影中は、演じたトルコ人俳優ケナン・エジェとも英語でコミュニケーションを取っていたという。「片言の英語。できるというレベルではありません」と謙遜するが、ムスタファを説得する長ゼリフのシーンは見応え十分。
さぞや苦労したのではと思えば、「村の人の良さをさりげなく伝えたいと思っていたので、英語でしゃべっていた感覚がないんです。思いを届けることに意識がいっていたのかな。英語でしゃべっていると、後から気づいたくらい」と笑う。
一方、時空を超えた同一人物のようにも感じられる二役に挑戦した忽那。田村の助手、ハルは失声症の女性なのでセリフはないが、テヘラン在留邦人の春海は日本人との会話以外、全て英語だ。14歳までオーストラリアで暮らしていた忽那は英語がペラペラ。しかし、セリフとなると別ものらしい。
「オーストラリア英語でなまっているので、トルコに行く前にレッスンしたんです」と告白した忽那。「英語を直すのはすごく難しい。次の発音をする前に準備をしなきゃいけないんです。舌の調整、口の開き方、全部です」。これには内野も「水を得た魚のようにセリフを言っているのかと思っていたよ」とびっくりしていた。
内野と忽那は、当時の人たちの思いや両国の友好関係を、言葉や国を超えた熱演で表している。(取材・文:高山亜紀)
映画『海難1890』は12月5日より全国公開