小林よしのり、テロへの報復に戸惑い「方法論がない」
アフガニスタンにおける「対テロ戦争」の現実を捉えたドキュメンタリー映画『レストレポ前哨基地 Part.1』の先行上映&トークイベントが25日、渋谷のユーロライブで行われ、漫画家の小林よしのり氏、桜美林大学教授の加藤朗氏、自衛官で映画監督も務める佐野伸寿氏(以下敬称略)が登壇。それぞれの立場から、本作で描かれる戦場の現実と、日本の安全保障について熱く語った。
「対テロ戦争」の現実…『レストレポ前哨基地 Part.1』写真ギャラリー
本作は、地上で最も危険といわれたアフガニスタンの激戦地コレンガル渓谷へ2007年に派兵された米軍小隊に密着し、治安維持という名の「対テロ戦争」の実情に追った衝撃のドキュメンタリー。その圧倒的にリアルな描写で、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート、さらにはサンダンス映画祭アメリカンシネマ・ドキュメンタリー部門グランプリを受賞した。
アフガニスタン、イラクの両戦争に反対し大バッシングを受けたという小林は、「戦争になったらメチャクチャになるぞって主張したら、右翼からも左翼から嫌われて……ワシは今、右も左もいけない状態」といきなり自虐。一方、2008年と2010年にアフガニスタンの紛争地に自ら赴いた加藤は、「自爆と銃撃戦を目の当たりにした」と衝撃告白。ところがその戦術は、「ベトナム戦争の時と同じ、対反乱作戦。あれから何も進歩していない」と指摘する。
また、日本の安全保障に話がおよび、一般の方から「武器を持たず、やられてもやり返さない」という意見が出ると小林は、「ガンジー主義は、無抵抗でもやられているだけではない。どんなに殺されても、憎悪を感じず、前に進む覚悟がいる。ワシだったら家族や友人が傷付けられたら激高するけどね」と本音がポロリ。「ただ、自分の国がやられるとナショナリズムが沸き立ち、報復ということも考えられるが、ことテロに関しては、どこへ報復するのか、どこが始まりでどこが終わりなのか、方法論がなく、本当に難しい」と吐露。
これに対して佐野は、「日本はこれから、サミットもあり、オリンピックもあり、テロの標的になりやすい。まずは、テロを起こさせないためにも、入国を厳しくしたり、警察の人員を増やしたり、そういったところに力を注いでいくとともに、先頃、パリで起きたテロ事件から何を学ぶかというのも大切なこと」と持論を展開した。(取材:坂田正樹)
映画『レストレポ前哨基地 Part.1』『レストレポ前哨基地 Part.2』は11月28日より渋谷アップリンクほか全国順次公開