賞レース席巻『スポットライト』実在のジャーナリストが語る調査報道
オスカー有力候補作『スポットライト(原題) / Spotlight』について、実在のジャーナリストチーム「スポットライト」のメンバー、ウォルター・ロビンソン、マイク・レゼンデス、サーシャ・ファイファー、ベン・ブラッドリー・Jr、前編集長マーティ・バロンと脚本家ジョシュ・シンガーが語った。
本作は、アメリカ・ボストンにおけるカトリック教会の神父たちによる児童への性的虐待と、それが数十年にわたって組織的に隠ぺいされてきたという恐るべき事実を暴いたボストン・グローブ紙の記者たちを描いたドラマ。監督はトム・マッカーシー。ウォルターをマイケル・キートン、マイクをマーク・ラファロ、サーシャをレイチェル・マクアダムス、ベンをジョン・スラッテリー、マーティをリーヴ・シュレイバーが演じた。
脚本執筆理由について、ジョシュは「僕が執筆した映画『フィフス・エステート/世界から狙われた男』では、調査報道を通して友情を描いたが、伝えきれていない調査報道に関することが山ほどあった。例えば、インターネットがいかに真のジャーナリズムに悪影響を及ぼし、多くの人が仕事を失ったかなどだ。そこでボストン・グローブ紙の記者たちを描くことで、人々にまた調査報道による影響を与えられるかもと思った」と語った。
現在でも、時間やお金をかけた調査報道は可能か、との質問にマイクは「わが社では今でもそれが可能だ。確かに以前に比べ縮小した部分もあるが、今でも調査報道を続ける決意はあり、現在『スポットライト』チームは設立当初の2001年よりも大きくなった。前編集長マーティがチームを強化してくれたからだ。今僕らは、手術をダブルブッキングするマサチューセッツ州の総合病院を1年かけて取材し執筆した」と明かすと、マーティは「ワシントン・ポスト紙も調査報道の別のスタッフが居て、それぞれが調査したい題材を取材している」と続き、さらにサーシャが「L.A.タイムズ紙は(ローカルの最新情報を掲載する)メトロセクションを拡大したわ」と語った。
記者時代の初期と比較して「1972年に始めた頃はタイプライターを使用し、ファックスも1ページを6分かけて送信し、記事も編集者が赤ペンで書いていた」とウォルターが語り、本作についてベンは「僕ら全員本作を気に入っている。もちろん、僕らが描かれることに不安はあったが、ジョシュと監督のトムに会ってどれだけ真剣なのかが理解できてからは、気持ちが落ち着いた」と笑顔で答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)