タランティーノ、新作西部劇で米人種問題を描く
鬼才クエンティン・タランティーノ監督が、話題作『ヘイトフル・エイト』について語った。
本作は、南北戦争後のワイオミングを舞台に、猛吹雪に遭遇する2人の賞金稼ぎと女囚人、さらに道中で出会った保安官やカウボーイなどを巻き込んだ8人の人間模様を描いた西部劇。キャストにはサミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーンなど演技派俳優を集め、70ミリフィルムで撮影された。
前作に続き、再び西部劇を描いたのは「今の僕は西部劇のムードだ。これまで自分が製作したいジャンルを描いてきたが、その多くはどうやって製作するかよく理解していなかった。『キル・ビル』の武術や『デス・プルーフ in グラインドハウス』のカーチェイスなどがそうだ。当時は、それらを学んで誇りに思ったが、その後それらを別の映画で描かなかった。だが今作は、前作『ジャンゴ 繋がれざる者』で西部劇を学んだものの、あの映画だけで西部劇のジャンルを終えたくなかった。多くの西部劇が避けてきたアメリカの人種問題を描きたかったんだ」と明かした。
キャラクター同士が敵視し合う演出について「これは映画『レザボア・ドッグス』も同様で、サスペンスは、ある意味ゴムを伸ばし続けたような状態だ。そんな緊張感あるシーンは5、6分だけよりも、25分以上ある方が良いに決まっている。僕は、映画内でずっと今にも暴力が起こりそうな筋道を立て、それをできる限り引きのばして製作した。バイオレンスが実際に起こらなくてもよいが、観客はそれが起こるのを待っている状況だ」と説明した。
音楽を担当したエンニオ・モリコーネについて「彼は『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』の序曲だけを書いてくれたが、それまで作曲家にそのような仕事の仕方をしてもらったことがなかったせいか、うまくいかなかった。でも今作には、独特な個性を持った楽曲が必要と思い、まず彼にイタリア語に訳した脚本を送ってから彼に会った。彼からは、駅馬車のように常に前に進む感じと、暴力が起こる前の険悪な感じの曲が必要だと言われた。彼には時間がなくて、テーマ曲だけで終わりと思っていたが、彼からもっと曲を書きたいと言われ、最終的に全部で30分以上の曲になった」と明かした。
映画は、個性的なキャラクターが繰り広げる緊張感みなぎる西部劇だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)