山田洋次監督、大泉洋の寅さんは満更でもない「彼なら別の寅さんができる」
山田洋次監督と女優の竹下景子が19日、葛飾柴又寅さん記念館のリニューアルオープンセレモニーに出席、「寅さんを演じてほしい俳優」第1位に大泉洋が選ばれたことについて山田監督は「彼なら別の寅さんができるかもしれませんね」と語った。この日は山田監督の最新作『家族はつらいよ』に出演する若手演歌歌手の徳永ゆうきも来場した。
今回のリニューアルでは「寅さんと一緒に楽しむ鉄道の旅」をテーマとし、その象徴である「鉄道」や「駅」を新たな展示物として追加。『男はつらいよ』第1作が公開された時代の昔懐かしい駅舎や駅長室のセットを制作・展示している。このセットの駅看板や伝言板、木製ベンチ、硬券切符、時刻表、運賃表などのいくつかは実際に京成電鉄などで使用されていたものを借用しているという、
また現在の柴又駅が通る、京成金町線の原点となる「帝釈(たいしゃく)人車鉄道」を当時のものに近い形で再現。実際に人車鉄道の中に乗車できるようになっているほか、原寸大の客車ボックスシートを設置。『男はつらいよ』の鉄道に関わるシーンを窓の部分のモニターに映し出し、寅さんが旅した全国の原風景を車窓から楽しめるようになった。
山田監督は大勢の観客を目の当たりにし、「こんなにたくさん来ていただけるとは想像もしていなかった。ありがとうございます」と謝辞。「寅さんがいた時代の暮らしは消えつつあるなという思いを、寅さんを撮っていた最中でも持ち続けていました。今、僕たちが失ったものは非常に大きかったのではないかと。あれはとっておいてほしかったというものが多くある。鉄道だって変わってしまった。寅さんの時代の旅は鈍行が遅く、座席も固くて不便も多かったが、それと同時に旅が楽しくて、いろんな人とつながる時代でもあった。こちらではそういったものが体験できる記念館でありたいと思っています」とあいさつした。
さらに先日、「寅さんを演じてほしい俳優」第1位に大泉洋が選ばれたという報道があったが、山田監督は「大泉洋くんだったらいいんじゃないかな。彼なら別の寅さんができるかもしれませんね」と満更でもない様子で、竹下も「それは観てみたいですね。そうなるとさくらさんはどうなるんでしょうね」と興味津々だった。会場には柴又駅の駅長も来場し、発車の笛とともに「出発進行!」と声をかけてテープカット。セレモニーに華を添えた。(取材・文:壬生智裕)
映画『家族はつらいよ』は2016年3月12日より全国公開