性別適合手術を扱ったオスカー候補作、カタールで上映中止に
世界で初めて性別適合手術を受けた画家リリー・エルベの伝記映画『リリーのすべて』が11日(現地時間)、カタールで上映禁止になったと同国のニュースサイト The Doha News が報じた。3月に日本で公開予定の本作は、アカデミー賞の前哨戦ともいわれる第20回サテライト賞で7部門にノミネートされるなど、賞レースでも注目を浴びる話題作だ。
The Doha News によると、カタールで7日(現地時間)から上映が開始された本作は、「#『リリーのすべて』上映反対」のハッシュタグが付いたツイートがネット上に氾濫するなど、カタール国内で話題を呼んでいた。上映中止は11日(現地時間)に決まり、同国文化省の公式Twitterは「関係部署と情報交換を行い、映画『リリーのすべて』が上映中止に至ったことをお伝えいたします」というコメントを発表した。
上映中止の決定に対して現地の人々からは、「予告編を観たが、この作品はここ(カタール)で上映されるべきではない。世界で起きているモラルの堕落がこの作品に含まれている」「私たちの宗教、モラル、伝統を否定する映画の上映は禁止されるべき。上映を決めた関係者は説明責任がある」という意見がある一方、「この作品は実話を基にしているし、通常の映画といえる。異常なのは上映中止を喚く連中の考え方だ」「18歳未満の観賞は禁止にしてもいいが、上映はされるべきだ」という声もあり、更なる議論を呼んでいる。
『博士と彼女のセオリー』(2014)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが、『レ・ミゼラブル』(2012)に続いて、トム・フーパー監督とタッグを組んだ『リリーのすべて』。今から80年以上も前に、世界で初めて性別適合手術を受けたデンマーク人、リリー・エルベの実話に基づき、命の危険を冒してでも自分らしく生きることを望んだ主人公と、一番の理解者であり続けたその妻が織り成す魂の触れ合いを描いている。(編集部・海江田宗)
映画『リリーのすべて』は3月18日より全国公開