アカデミー賞ノミネートのトルコ版『ヴァージン・スーサイズ』、5人姉妹のビジュアル公開
第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『裸足の季節』の、『ヴァージン・スーサイズ』(1999)を思わせる5人姉妹のビジュアルが公開となった。同作は、フランス在住のトルコ人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作にして、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞第41回では9部門でノミネートされるなど高い評価を受けている。
本作は、10年前に両親を事故で亡くし、祖母の家で暮らす5人姉妹が、厳格なしつけ、古い慣習、封建的な思想などさまざまな困難のなかで、自由を獲得しようとするものの、長女から順番に見知らぬ男性のもとに嫁がされていく……という物語。この程公開されたビジュアルには、そんな閉塞した環境で暮らす美しい姉妹たちの姿が写されている。
「5人姉妹」「自由のない環境」「女性監督」といったキーワードを並べると、ソフィア・コッポラ監督の長編デビュー作『ヴァージン・スーサイズ』を彷彿させるが、エルギュヴェン監督自身はこう語っている。「あの映画は公開当時に観て、原作も読んだわ。でも『裸足の季節』はその種の変形ではないの。元になっているのは(ルキノ・ヴィスコンティ監督の)『若者のすべて』(1960)だし、わたしが好きで、影響も受けている作品に『ソドムの市』(1975)がある。ピエル・パオロ・パゾリーニ監督がファシズムに立ち向かう社会を描いた話で、それと同じように、スタイルと内容が断絶しているようなものを目指したの」。
フランスに暮らすエルギュヴェン監督は、帰国するたびにトルコにおける性差別を痛感しており、それが製作のきっかけになったという。「例えば、とある学校の校長が、男女の生徒が教室に入る際、同じ階段を使うのを禁止してわざわざ別の階段を作ったそう。日常的なことに、大きな性的な意味を付け加えてしまうの。しかも、女性を家事にだけ従事させて子供を生産する機械に貶める傾向もあって。かつて、トルコは女性にいち早く参政権を与えた国の一つだったというのに、とても哀しいことだわ」。
そう、自国の現状を憂い、女性たちの地位向上を願う監督の思いが込められた本作がオスカーにノミネートされ、世界に広がったことによって自国にどのような影響をもたらすのか。今後の反響に注目したい。(編集部・石井百合子)
映画『裸足の季節』は初夏、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開