鬼才が描く二階堂ふみ&真木よう子のエロス
『シャニダールの花』などの鬼才・石井岳龍がメガホンを取る映画『蜜のあわれ』より、金魚の少女・赤子(二階堂ふみ)と幽霊・ゆり子(真木よう子)の怪しげな触れ合いを収めた劇中カットが公開された。
文豪・室生犀星が晩年に発表した小説を基に、室生自身を想起させる老作家(大杉漣)と、彼が愛でる少女の姿に変貌する金魚(二階堂)との無邪気かつエロティックな触れ合いを描いた幻想的な文学ドラマ。老作家の過去の女である怪しげな幽霊役に真木、同時代に活躍した作家・芥川龍之介役に高良健吾、金魚売りの辰夫役に永瀬正敏と個性豊かな俳優陣が脇を固めている。
石井監督は「二階堂ふみさんは、恐るべき女優さんですね。会った瞬間から、この人は赤子だと思いました。今日本の女優さんの中でこの役をやるなら、二階堂ふみさん以外にはありえないと思います」と大絶賛。「彼女自身も原作を読み込んでいて、出演を希望していたので、本人の思い入れを大事にしました」といい、「自分の意見もきっちり伝える、非常にしっかりとした大人の部分と、自由奔放な子供っぽい部分を併せ持っている方」と二階堂を評した。
一方、真木については「今回、幽霊だけど人間的な感情もあって一番難しい役柄だったと思うのですが、編集してみると感情が繋がっていてさすがでしたね」と明かし、「幽霊なのに『心臓が止まるかと思った』とかおかしいセリフも、絶妙なお芝居になっておりました」と感心した。
二階堂と真木は昨年放送されたドラマ「問題のあるレストラン」(フジテレビ系)でも共演しており、プライベートでも仲が良いそうで、石井監督は「二人がこのシーンの微妙な感情の交錯をどう表現するのか、私もとても興味深く見守りました。他のシーン同様、難しい役の微妙な感情の揺れの振幅を、お二人ともそれぞれの固有のやり方で的確に掴んで、感情を味わい深く葛藤させ交錯させています」と同シーンを説明。
「二階堂さんのあくまで金魚としての無邪気な好奇心と言動と人間的エロスに対する幼稚さゆえの戸惑いと、真木さんの幽霊でありながらも生前のエロスが徐々に蘇り灯がついてゆく複雑な戸惑いの、感情表現のぶつかり合いが見事で、鑑賞していると何かこう体の奥の方がゾクゾクぞわぞわしますね」と語っている。(編集部・中山雄一朗)
映画『蜜のあわれ』は4月1日より新宿バルト9ほか全国公開