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時代劇再生を願う榎木孝明 取り戻したい日本文化

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榎木孝明
榎木孝明

 俳優で画家の榎木孝明が時代劇の「再生」に向けた運動に取り組んでいる。最近ではNHK大河ドラマ「真田丸」で悪の武将・穴山梅雪を怪演し、昨年は30日間に及んだ「不食(ふしょく)」生活で話題となり、古武術にも精通し、旅人でもあるなど、いくつもの顔を持つ榎木が、生涯の使命として取り組む「時代劇再生」プロジェクトについて語った。

榎木孝明出演映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』予告編

 日本人としての誇りを胸に、失われつつある日本文化継承のために時代劇の聖地・京都にアミューズメントパーク施設「時代村」を建設するという構想を持ち、海外への情報発信を視野に入れ、国を挙げての運動も呼びかけている榎木。そのきっかけとなったのは、40年以上続いたTBSの時代劇ドラマ「水戸黄門」が2011年に幕を閉じたことだと語り始める。

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 同ドラマの撮影が行われていた東映京都撮影所での打ち上げに参加した榎木は、「(打ち上げで)皆さん技術継承など今後への不安の話ばかりされていて、時代劇の灯を消さないよう考えないといけないと思った」と振り返る。そしてその思いは20代の頃から京都で仕事をしていた榎木が、常々感じていたことだったという。

 「(撮影所の人たちは)職人気質で、言葉使いは荒いけど、みんな時代劇を愛している人たち。京都のスタジオはちょっと背筋が伸びる雰囲気で、そのピリピリ感がよかったのが、だんだん緊張感が欠けてきて……」と心境を吐露する。自身、放送中の「真田丸」で穴山梅雪を演じたが、「時代劇は“形”(所作や作法)がちゃんとあってのものなので、(形が無くなると)本来のファンが離れてしまう」と危機感を覚えているそうだ。

 そこで、「本物の時代劇をちゃんと作って、(今の時代劇との)違いを明確に表現できればおもしろい。ピンチを逆にチャンスに変える」と意気込む榎木が取り組んでいるのが、時代劇再生運動「映画一期一会プロジェクト」。

 この運動の拠点となる「時代村」には京都府京丹波町が協力予定。京丹波町が土地を提供し、オープンセットでの撮影が可能で、同時にアミューズメントパークのような機能を持つ施設を構想している。「今春にもその完成予想図を描ければ」と話す榎木だが、この施設は時代劇の発展のためだけではない。「総合文化施設ですね。外国人も日本文化を探して旅する人がたくさんいる時代。旅籠(はたご)を充実させて宿泊施設にし、体験型の街を作り、継承者の問題を抱えている伝統工芸・芸能の人たちも巻き込んでいきたい」と壮大なプランを明かした。

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乗馬もこなす榎木孝明

 「クールジャパンの企画にも素晴らしいものはあるけど、時代劇はどこの国も真似できない。そこに目をつけてほしい。東京オリンピックに向けて、時代劇を通じて日本文化をどう伝えていくか考えている」と熱く語る榎木が、この運動にのせているのは「日本に肚(はら)文化を取り戻したい」という思い。胆力、気力、覚悟を表す“肚”が、時代劇、そして今の日本には欠けていると指摘し、「たとえば黒澤明さんの時代、映画製作者は戦争の生き残りで、今の時代劇と全然違う生と死の感覚を持った人たちがつくっていた。その映像は、空気感がまったく違う。俺たちもそういう時代劇を表現したい」と続ける。

 そしてそのためには“教育”が必要と語る榎木は、「役者は、立ち居振る舞い・殺陣・乗馬・舞いが最低レベルの基準になってから時代劇に入ってきてほしい。『時代村』のなかでは、日本の歴史や武士道なども含めて、ちゃんと教える機関をつくればいい。NHKの大河ドラマに出ることが決まったら、そこで勉強しなくちゃいけないようなシステムにするとかね」と意欲を見せる。

 時代劇再生プロジェクトを通じて日本に本来あるはずの肚(はら)文化を取り戻そうとする榎木。そこには日本人が誇れる感覚を宗教対立やテロなどが相次ぐ国際情勢にまで波及させていきたい、そのことを多くの人に考えてもらいたいと願う、誇り高き日本人の姿があった。(取材・文:岩崎郁子)

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