『ニュー・シネマ・パラダイス』に隠された“映画の嘘”大林宣彦監督が明かす
名作『ニュー・シネマ・パラダイス』デジタル・レストア・バージョンのブルーレイBOX発売に先駆けたお披露目上映が14日に都内で行われ、出席した大林宣彦監督が上映前のトークで同作に隠された“映画の嘘”を明かし、「あえて嘘をついているんです。嘘を承知で観るのが映画であり、嘘だからこそ真実が描き出される」と語った。司会は映画ライターのよしひろまさみちが務めた。
『ニュー・シネマ・パラダイス』は、戦後間もないシチリアの小さな村を舞台に、少年トトと映写技師のアルフレードが映画を通して心を通わせていくさまを描き、アカデミー賞外国語映画賞やカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリなど数多くの賞を受賞した映画史に残る不朽の名作。
「子どものころは、トトのように映写室に入り浸っていました」という大林監督。本作で印象に残る場面を尋ねられると、「(ロールチェンジのために本来2台必要な)映写機が一つしかなかったり、映画館の外の人たちに映画を見せるシーンでは、ガラスを鏡のように使って反射させているのに左右が逆になっていなかったり、嘘が多いんです」と指摘しながらも、「あえて嘘をついているんです。嘘を承知で観るのが映画であり、嘘だからこそ真実が描き出される。世界中で戦争をしているけど、嘘のように戦争がなくなるといいなって、そういう夢を信じさせてくれるのが映画」と稀代の映画人ならではの感想を述べた。
さらに大林監督は、「最初に上映されたときは短いバージョンだったんですよ。後半のトトが大人になってからの場面がなくて、子ども時代の話だけで終わっちゃうの。映画に出てこないのにクレジットされていた人もいて、それがブリジット・フォッセー。『禁じられた遊び』で両親を戦争で失った少女を演じた女優です。長いバージョンの方では43歳になったブリジット・フォッセーが出ているんですよ。同じように戦争に父親を取られて、悲しみを埋めるために映写室に入り浸りになったトトの恋人役は、ブリジット・フォッセーが演じるという必然性があるんです。だから(今回発売される)完全オリジナル版をぜひ観てほしいですね」と思い入れたっぷりに語る。
「映写機だって、カラーフィルムだって、もともとは兵器として生まれたもの。兵器から人殺しの力を削ぎとって、平和の道具にするのが映画人の伝統。目の前に核のボタンがあったとして、この映画を観たあとに押す人はいませんよ」と大林監督のトークは最後まで熱を帯びていた。(取材・文:タナカトシノリ)
『ニュー・シネマ・パラダイス』インターナショナル版&完全オリジナル版 デジタル・レストア・バージョンのブルーレイBOXは4月6日に発売(価格:6,500円+税)