フランスの名優イザベル・ユペールがキャリアを振り返る
映画『主婦マリーがしたこと』や『ピアニスト』などでおなじみのフランスの名女優イザベル・ユペールが、自身のキャリアについて4日(現地時間)にニューヨークのリンカーンセンターで行われたイベントで振り返った。
これまでミヒャエル・ハネケなどの巨匠から若手監督まで、さまざまな国の作品に出演してきたが、作品に何を求めているのか。「まず、最初は監督を意識する。監督が母国でどのような評価をされているかを調べ、次にもし国境を超えた作品ならば、出来る限り自分を強いて挑戦できるものを選ぶわ。そうしなければ、良いフィルムメイカーとは出会えない。個人的には映画製作自体が(人生の)旅とつながっていると思う」と見解を述べた。
『主婦マリーがしたこと』のクロード・シャブロルとは『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』『甘い罠』『ヴィオレット・ノジエール』など多数の作品でタッグを組んでいる。「ある監督と仕事をして、なぜその監督が再びわたしを使って別の作品を撮りたいと思わないのか疑問に思ったことがあるの。通常、監督は次回作には他の女優をキャストし、同じ女優を雇うことがないのはわかっている。シャブロル監督は、映画を決して崇拝するようなことはなかったし、キャラクターを溺愛することもなかった。彼は人間のそのままの姿を映像にして、ロマンチックな描き方やヒーロー的な描き方はしなかった。主人公が壁にぶつかったときでも、社会的あるいは政治的な局面から(その後の展開を)描いていくことが多かったわ。そのような方針で描かれる映画が個人的には好きなの」と答えた。
映画『ルル(原題) / Loulou』(1980)で共演したジェラール・ドパルデューと、最近、『ヴァリー・オブ・ラブ(原題) / Valley of Love』で再共演した。「女優としては、過去に一つの作品でジェラールと共演し、また再共演しただけのことで、過去の彼との共演を現在と結びつけたりするのは、うぬぼれた考えだと思う。でも、女優として彼とは(現場で)いい関係が保てていると思うし、演技でも息が合っていると思う。彼との共演はやり易いの」と語った。
長年女優としてキャリアを積んできたが、監督に挑戦する気持ちはあるのか。「怠け者だから、答えはノーよ! 監督は多くのことをこなさなければいけないわ。もしかしたら、好奇心から生涯で一度だけ挑戦することはあるかもしれない」と語ったものの、女優として満足しているようだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)