リピーター続出の『マジカル・ガール』を柳下毅一郎と高橋ヨシキが熱く語る!
独創的で先の読めないストーリー展開で大ヒット中のスペイン映画『マジカル・ガール』の、新宿地区初公開を記念したトークショーが10日に新宿シネマカリテで行われ、映画評論家・翻訳家の柳下毅一郎とデザイナー・ライターの高橋ヨシキが同作について熱く語った。
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日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の衣装を着て踊りたい。白血病で余命わずかな愛娘(まなむすめ)が抱いた願いをかなえるため、失業中の父親が思わぬ出来事に巻き込まれ、破滅していくさまを描き出した本作。先の読めないストーリー展開でネタバレ注意が喚起されている同作だが、今回のトークショーは上映後に行われたということもあり、本編の内容に深く突っ込んだものとなった。
「町山(智浩)さんからルイス・ブニュエルみたいな映画だよと言われて。そういうことを言うなよと思いつつ、気になっていた映画だった」と切り出した柳下は、主婦売春を描いたルイス・ブニュエルの『昼顔』の中に登場するワンエピソードを紹介。それは奇妙な東洋人から小箱を見せられ、他の女性はのけぞるも、主人公のセヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)だけはその箱の中身のものを使ったプレイに応じるというシーンだったが、「当然、ブニュエルにその箱の中身が何かは言っていないし、この映画もそれと同じ」と解説しつつも、「でもブニュエルというよりも、(映画の男性登場人物が)女性のために破滅することで男を取り戻す瞬間がカッコよかったし、感動的な瞬間でした」と付け加えた。
さらに「部屋の向こうで何かが起こっているのに、それを隠すのがこの映画のテーマ」と続けた柳下は、「見せないことで、観客がその仕掛けにかかっていく。絶対に何かあるはずだと。見せたら効果はないんですよ」と解説。高橋も「それって珍しいですよね。普通、同じようなことをしてももったいぶっているように感じるのに、この映画は見せないことの必然性が高い」と感心した様子を見せた。
本作のメガホンをとったカルロス・ベルムト監督は、本作のモチーフとして「魔法少女まどか☆マギカ」の名前を挙げるなど、日本文化への深い愛情を表明している。「前から日本に何ヶ月か滞在して脚本を書くくらい好きらしい」と柳下が切り出すと、高橋も「会ったことはないけど、夜はゴールデン街にいるらしいですね。彼の次回作はペドロ・アルモドバルのプロデュースなんで楽しみ」と笑顔を見せた。(取材・文:壬生智裕)
映画『マジカル・ガール』は全国公開中