「クレしん」ノスタルジーと新しさの共存 映画最新作で意識した初期
現在公開中の劇場版シリーズ第24作『映画クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃』では、線の意図的なゆがみや背景など初期の「クレヨンしんちゃん」らしさが垣間見える場面がある。高橋渉監督によると、大胆に初期の作品に引き戻してみようという意識があったという。
『映画クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃』フォトギャラリー
漫画的な残像表現「オバケ」などを使用せずに、美しい背景などといった実写作品っぽさもある「クレしん」。年々CG技術などが進化していき表現技法も増えてきたが、これにより生まれた「キャラクターとの乖離(かいり)」が気になっていたと監督は明かす。「昔はもっと影の付け方もシンプルで、線も少なかったんです。懐古趣味ではないですが、近年少しリアルに寄りすぎていたなと。空の描き方や木々の描き方とかも、普段よりだいぶ初期に戻しています」。
この改革ができたのは、監督2作目となりスタッフとの絆が芽生えたからこそ。「彼らならばもっとできる」という高橋監督の信頼の受けたスタッフたちは、久しぶりの線に戸惑いながらも何度もやり直しながら映画を作り続けた。監督は当時のことを「ちょっと行きすぎです。ちょっと足りないので、もっとフニャフニャさせてくださいとかやり取りすることもありました。軽く見せるための味つけなんですけど意外に手間がかかるんです。お客さんにはなんだか適当な線に見えるかもしれませんが」と振り返る。
またギャグの部分でも、初期の「クレしん」の要素がある。例えば、原作者である臼井儀人さんが存命だったころにしていた、漫画の担当編集いじり。最新作の『映画クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃』では、現在の連載中の「新クレヨンしんちゃん」の担当編集である“山田氏”が登場する。そのほかにもしんちゃんの代名詞(?)でもある「おケツ」が活躍するなど、ネタ面も充実。高橋監督は、次回では「ぞうさん」も出したいと笑っていた。
そしてそれだけで終わらずに、「今」の要素も取り入れるのが高橋監督の良さ。制作中にも、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『バクマン。』などを鑑賞したという監督は、本作でさまざまな作品にオマージュをささげたとのこと。ノスタルジーと新しさが共存した魅力的な世界が、『映画クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃』には広がっている。(編集部・井本早紀)