『レヴェナント』公開1週で違法動画がネット上に…
映画著作権の普及・保護を行う日本国際映画著作権協会(JIMCA)が26日、「世界知的所有権の日」を記念して、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、今年のアカデミー賞3部門を制した『レヴェナント:蘇えりし者』の特別上映会を行い、ゲストで登壇したジェシカ・ウェブスター氏(アメリカ大使館経済・科学担当公使)は、公開1週で同作の違法動画がネットにアップされていたことを嘆き、「彼ら(映画の作り手たち)の素晴らしい才能が発揮し続けられる環境を守らなければなりません」と力を込めた。
知的財産権とは、音楽・映画の創作など、知的活動で作られた無形の財産に関する権利のこと。4月26日は、国連の世界知的所有権機関(WIPO)が定める「世界知的所有権の日」で、JIMCAは毎年、この日に記念上映会を開催している。
ウェブスター氏は、『レヴェナント:蘇えりし者』の原作者マイケル・パンク氏について「彼は現在、世界貿易機関(WTO)のアメリカ大使という立場なので、映画については、なかなか語ることはできないかもしれない。今日は私が、代理でお話しできてうれしい」と語りだし、「彼は弁護士で、小説を書いてしまうほどのアウトドア好き。米通商代表部の政策アドバイザーを務め、知的所有権保護の交渉に携わって、大きな成果を上げました」と紹介する。
「だから、彼の本を映画化した本作は『世界知的所有権の日』に上映されるのに、もっともふさわしい映画」と話したあと「スクリーンの裏でアーティスト、技術スタッフ、営業ビジネスマンら、300人以上が関わり、本作は完成しました。残念ながら公開1週で、違法動画がネットにアップされてしまいましたが、知的所有権を保護し、映画業界の雇用を確保して、彼らの素晴らしい才能が発揮し続けられる環境を守らなければなりません」と思いを語った。
同席した本作配給元、20世紀フォックス映画の佐藤英之氏も「本作は、念願のアカデミー賞主演男優賞を獲得したレオナルド・ディカプリオ、昨年と2年連続で監督賞に輝くアレハンドロ・G・イニャリトゥ、3年連続で撮影賞受賞の撮影監督エマニュエル・ルベツキ、そして音楽の坂本龍一と、超一流アーティストが魂を注ぎ込んだ作品。我々はそれに賛辞の対価を払うことで、映画産業を発展させてきました」と続け「法やモラルに反するコンテンツは、誇りを持つアーティストを悲しませることになると考えてみてほしい」と訴えた。
『レヴェナント:蘇えりし者』は1820年代、先住民との争いが増すアメリカ西部を舞台に、毛皮を狩る遠征隊に参加し、狩猟中に瀕死の重傷を負ったヒュー・グラス(ディカプリオ)が、仲間に裏切られた復讐のために、極寒の荒野でたった一人サバイバルしていく、実話を基にした壮絶なドラマ。佐藤氏は「余談ですが」と前置きし「“レヴェナント”とは“黄泉の国から戻った者”という、英語が母語の人も使わない難しい言葉。邦題を決める際、社内でも意見が分かれましたが、今はこのタイトルでやはりよかったと思っています」と裏話も明かしていた。(取材/岸田智)
映画『レヴェナント:蘇えりし者』は全国公開中