米サイエントロジーの内部を再現した問題作とは? - トライベッカ映画祭
第15回トライベッカ映画祭の出品作『マイ・サイエントロジー・ムービー(原題) / My Scientology Movie』について、キャスター兼ジャーナリストのルイ・セロー、ジョン・ダウアー監督、そして俳優アンドリュー・ペレスが語った。
本作は、いまだに謎めいた部分の多い宗教団体・米サイエントロジーの内部を元上級幹部マーク・ラスバンとのインタビューを通して解明し、さらに、脱退した信者たちが明かした内部の出来事を俳優を起用して再現した問題作。
ルイは撮影前から教会リーダーであるデヴィッド・ミスキャヴィッジの取材は不可能だと理解していたようで、「最初から今作は同宗教団体を調査した映画にはしたくなかった。僕らが映画製作を始め、同宗教団体が僕らのことを疑って僕らの調査を開始した時点では、まだミスキャヴィッジの取材の可能性はあると思っていた。だがその後、僕らが同宗教団体の現信者と彼らの敷地で衝突した際の会話がリアルだったことや、元上級幹部マークのもと、俳優を雇って同宗教団体の内部を再現したことで、ミスキャヴィッジの取材がなくとも、特に見落とした部分はないと感じたんだ」と語った。
同宗教団体の内部では過去に虐待や暴力があったことがメディアで報道されたが、かつて集団自殺のあったジム・ジョーンズの人民寺院と同様なことが起こる危険性について、ダウアー監督は「僕は、そんなことが起きないようにするためにも、同宗教団体(の元信者)は実際に内部で何が起きているか明らかにすべきだと思う。もちろん最終的には信者が自分の運命を決めることにはなる。以前にFBIも同宗教団体への調査を行ったが、最終的に虐待や暴力などの有力な情報を得られず、本部への一斉検挙もせずに(騒動は)終わった。そのため、調査機関が内部を暴くよりも、(元)信者たちが内情を徐々に明かしていく方が効果的に思える」と答えた。
ミスキャヴィッジを演じたアンドリューは、「ビデオ映像やネットに載せられた彼のスピーチなどを通してリサーチした。その中でもビデオ映像は『ナイトライン』(深夜のニュース番組)のインタビューが印象深かった。さらに、元上層部の信者がデヴィッドのために記したスピーチなども読んでから、役柄に入った。僕はあえてデヴィッドに対して道徳的な価値観を持たずに演じたことで、観客も彼がどういう人物なのか真実の観点から見られるはずだ」と自身の演技に満足しているようだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)