園子温、構想25年の新作で初心に「ゼロからの出発」
園子温監督が14日、新宿シネマカリテで行われた映画『ひそひそ星』の初日舞台あいさつに妻で女優の神楽坂恵と出席。20代の頃に商業映画デビューを目指すも頓挫し、およそ25年の歳月を経て完成した本作に、園監督は「ゼロからの出発というか、これを撮ることで、これからの自分の映画の道をあらためて考え直したい」と思いを語った。
本作は、『ヒミズ』『希望の国』などの園監督が1990年に書いた脚本と絵コンテをベースにしたSFドラマ。福島県の富岡町・南相馬・浪江町でもロケを敢行し、絶滅種と認定された人間の記憶にまつわる物語を描いている。
「当時は野心的で、それまで映画で行われていない事を探しまくって映画の中に入れて、今まで観た事のない映画を作りたかった」と脚本を書いた思いを振り返った園監督。しかし、本作で商業映画デビューを目指すも「地味であまりにも変わった映画なので映画会社で作れる内容ではなくて。自主映画でとも思ったけど、それもうまくいかず、結局なくなりました」と明かした。
その後もコツコツ絵コンテを描くなど温め続けた作品で、園監督は「あれから方向転換が著しく、過激な映画監督となっちゃって」と笑いも誘いつつ、「ゼロからの出発というか、これを撮ることで、これからの自分の映画の道をあらためて考え直したいなという感じです」と本作を機に初心にかえったことを語った。
また、本作は自ら立ち上げたプロダクションの記念すべき第1作でもあり、主演兼プロデューサーを務めた神楽坂は「お金の部分ですとか、いつもは出演する側としては見ていない大変さがすごく勉強になりました。こうやって監督の思いも聞いて、話し合いをして作っているんだなと」と苦労を語った。(取材・文:中村好伸)
映画『ひそひそ星』は公開中